マツコの「時代閉塞の状況」

2017.02.07 Tuesday
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    JUGEMテーマ:ニュース

     タレントのマツコ氏は、ある番組で、

    「男性保育士による女児の着替え問題やアルバイトの病欠罰金問題、音楽教室からの著作権料徴収問題などが取り沙汰される現状に『もうみんな限界に来てるんだろうね、いろんなものが』と閉塞(へいそく)感を指摘し、根本的な議論が必要だと私見を述べた。」

    と報道されています。

     

     

     この時代感覚は多くが共有できる感覚だと思います。

     国債で大学の授業料を無償化することと抱き合わせに憲法「改悪」に持ち込もうとする自民党の思惑も、この時代閉塞の状況を表現していると思います。

     

     マツコ氏がこの教育の無償化についてどう考えているかについての言及はありませんが、「根本的な」議論として税金の議論をあげていることには共通するものがあります。

     もっと多くの国民が「人殺し」でない税収のあり方や支出の方法をある程度の良識をもって議論してほしいものです。

     毎年の脱税摘発額が300億円とか、タックス・ヘイブンに1年分の国家予算があるとか、特別会計に自由にできる埋蔵金が眠っているとか、法人税が少なすぎるとか、そういう具体的議論が積み重ねられてもいいと思うのです。

     国債といえば、日本の国債もそうですが、昨今話題の「為替操作」でアメリカ国債の100兆円が買われているという事実とかは是非、池上彰氏とマツコ氏との対談などでいじっていただきたいと存じます。

     

     そうだ!! 池上彰VSマツコ デラックス対談 なんていう企画も面白いと思います。

     石川啄木は『時代閉塞の状況』で日本の先行きを憂いましたが、マツコ氏の感覚でぜひ最近の閉塞状況の問題を提起してほしいと考えます。

     www.aozora.gr.jp/cards/000153/files/814_20612.html

     

     

     

     

    文学ディスカシォーネ|-|-|-|-|by ネコスキイ

    ングギ・ワジオンゴの夢

    2016.10.13 Thursday
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      JUGEMテーマ:読書

       

       ングギ・ワジオンゴ氏。

       今年はノーベル文学賞の第一位に予想されています。

       村上氏は2位予想。文学賞はとかく「抵抗者」に与えられがちになっています。

       その方向性から行くと、やはりケニアのングギ・ワジオンゴに与えられそうです(間違っていたら御免)。

       だだ、どういう活動をしてきたかがあまり日本に伝わってきません。ネットでも、著名なアフリカ独立運動家3人分を文学で一人でやりあげた人というくらいです。

       一度だけ彼の講演を直接聞いたことがあります。また、その後、直接会って挨拶した記憶があります。

       そのとき、政府の弾圧にあって腕や足に傷があるところを見せていただきました。

       あの時なぜ、政府がこんな普通な人を傷つけるほど弾圧するのか、意味が分かりませんでした。

       まだ、自分が政治的にも精神的にも成熟していない時期だったのでしょう。

       『Burning Grass』(英語版)、『一粒の麦』などを読んでももう一つ意味が分からないかつての自分でした。

       

       あれから三十数年余、こんなノーベル賞候補になっているなんて夢にも思わなかったです。

       蔵にしまってある図書をまた引っ張り出して、読んでみてみなさんに報告しますね。

       

       

      P.S.

        ・・・君とよくこの店にきたものさ

          わけもなくお茶を飲み 話したよ

          学生で賑わった この店の

          片隅できいていたボブ・ディラン (ガロ『学生街の喫茶店』)・・・

       

       現代の吟遊詩人ボブ・ディラン氏がノーベル文学賞を受賞したと聞いたとき、電気ショックが走りました。

       しかし、ムベなるかなでもありますね。賛否両論ありますが、文学賞のフィールドが広がったと言わざるを得ません。

       選考委員も若くなったのかもしれませんし。

       この調子なら、ラップなんかもノーベル文学賞になりそうです。文学賞を目指す人は少し軸足を移して考えてみるべきでしょう。

       ケニアのングギ氏もシリアのアドニス氏もいいですが、日本国憲法9条の歌もいいと思います。

       

       

       

       

       

       

      文学ディスカシォーネ|-|-|-|-|by ネコスキイ

      祖先がアイルランド 序章

      2015.06.28 Sunday
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         ケルト音楽を聴くと心がなごみます。
         祖先がアイルランド人のイギリス人と知り合いになり、交流しています。
         
         かつて、アイリッシュ・バーに入り浸りの私は、あの農家住宅を擬した造りのバーが大変お気に入りなのです。
         溜池山王のドコモビルの地下にはダブリナーズというアイリッシュ・バーがあり、外人が出入りする大変フランキーなバーがあります。
         ここで、一杯やっていると「モダン・アーバン・ルーラル」な気分に浸れて、フィシュ・アンド・チップスとギネスが超うまく感じます。
         
         最近、裏山の筍があまりに出すぎるので、知り合いになったイギリス人に収穫に来ていただきました。
         ただし、祖先がアイルランドということなので、アイリッシュと言えませんが、彼はノスタルジーほ感じているそうです。
         
         司馬遼太郎は『アイルランド紀行』で、『風と共に去りぬ』の最後に「タラへ帰ろう」というスカーレット・オハラの言葉があるが、それは元々アイルランドの「タラ」であって、その意味は「大地」であると述べています。
         ジャガイモしか取れないような貧しい大地にもかかわらず、やはりそこがアメリカ移民の原点だというのです。
         
         そういう文学を想起しながら、そのイギリス人をみるとなんだか愛おしい気持ちになりました。筍をアイルランドでは食する文化はないようですが、貧しき大地という所は同じ原点なんだと思います。それは搾取された農民なんですね。

         ダブリナーズは、新宿、池袋、渋谷、赤坂、品川にあるようです。   http://www.dubliners.jp/

         

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        『火花』を読む

        2015.05.13 Wednesday
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           何かと話題になっています、お笑いコンビ・ピース又吉氏の小説『火花』を読みました。
           三島由紀夫賞にノミネートされています。ゴールデン・ウィークの新幹線の中で読了してしまいました。
           どこの書店に行っても平積みになっているので、よほど売れているのでしょう。
           雑誌「anan」の表紙にコンビが出ています。
           又吉氏の方は、なにかこう、いつも何か考えているような風貌ですね。
           少し撫でれば弾けそうな感情をもっている繊細があるのでしょうか。


           内容は読んでみてのお楽しみのため、ネタバラシはしませんが、小説の通奏低音として、お笑いに賭ける情熱と先の見えない哀調があると言っておきましょう。

            特殊社会の法悦のような生き方と現実社会の矛盾という表現もできます。この小説は。
           
           
           ピース綾部氏が言うように、これから彼らの漫才が「ボケと突っ込み」ではなく、「先生とアシスタント」形式に激変していく妙味を味わっていきたいと考えます。


           又吉氏といえば、NHKの家族のヒストリーを探るという番組で、彼のルーツを沖縄、そして戦争・平和に求めていました。
           それが、コンビ名の「ピース」になったのか、偶然だったのか。
           
           小説の最後の方で、人への思いやりのある「笑い」を求める態度が、先輩との対立的会話から表現されているのには、驚きを隠せませんでした。
           
           何やら、控えめでありながら、大きな社会的バックボーンを持ったコメディアンが出てきたという悪寒がしたからです。


          P.S.

           その後、又吉氏は芥川賞を受賞しましたが、ニュースキャスターの古館氏の発言が差別的だとか、又吉氏はテレビ出演料が増えて年収1億を超すとかが話題になっています。そりゃ毀誉褒貶というものは有名人にはつきものです。普通の山が急に富士山に成長したようなものですからね。

           又吉氏の尊敬する太宰治は芥川賞が受賞できず、共産党に偏見を持ちつつも時代思潮に近づこうとして共産主義を接近し敗北自殺してしまいました。同じ時代に芥川賞を受賞した川端康成は反共を貫きながらも自己肯定できずに逗子で自殺しています。

           ともにアドラーの言う、人からの承認を求めていたのにいわば否定された!!のです。太宰は芥川賞という承認、川端は自分の承認(諸説ある)。

           そして、それはアドラーによると明治以降の賞罰教育の影響なのです。褒められるから勉強するという立場ではなく、ものがわかる楽しみがあるから勉強するという立場に変えなければ、たとえ芥川賞にアクセスできても、自分を肯定できないでしょう。

           又吉氏には、そういう信賞必罰、賞罰教育の悪影響を超えていってほしいと存じます。



           


           



          文学ディスカシォーネ|-|-|-|-|by ネコスキイ

          西行について序論の終わり

          2013.08.27 Tuesday
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            評価:
            白洲 正子
            新潮社
            ¥ 546
            (1996-05-29)

            JUGEMテーマ:学問・学校
             西行とは、西(死地)に行くという意味です。
             昨年のNHK大河ドラマ『清盛』にも絶世の美男子で和歌の名手として名高かったようです。
             
             どうして、なのに現世を絶って出家したのか。その経済的基盤は和歌山の荘園にあったと言われます。ああ、だから源平争乱の時代に自由に日本中を行き来できたのか、と合点がいきます。
             己が子どもを蹴倒してまで俗世を捨てる理由の方はまだ分かりません。
             高貴な方との男女関係のもつれがそうさせたのか。
             
             インドの友人がメールをくれて、hermitである西行saigyoの詩を英語で読んだが、どう思うか?質問されたので調べてみました。
             西行について知ってはいるもののちゃんとした認識がないまま人生を送るのはクリープを入れない珈琲のようなものかもしれません。そして、問題の核心は、その詩(和歌)が美しいと感じる立場はどのようなものかでした。
             
             結論から言うと、花鳥風月を詠むのは、隠者ならそんなもんだよ、という当たり前の立場をさらに深めて、社会全体が激動の時代にそのなかで闘うのではなく、逃走して隔絶した自然と心を詠んだ中にはどんな技巧をこらそうとも美は存在しないという立場に立つことが人間として大切なのだ、ということでした。
             これは西行全否定論になります。
             過激ですが、過去にそんなのがあったというぐらいの和歌の存在です。
             
             西行についての評論で有名なのは、小林秀雄、吉本隆明、白洲正子です。
              この名前を聞いただけでも、ある立場の人たちにはあまりいい感じがしないでしょう。
             同感です。
             
             ソ連時代に、マルクス主義芸術論は花鳥風月では社会は変わらないと考えていた論調と指導がありました。
             しかし、花鳥風月はストレスを解消し現代社会に大いなる貢献をしているのです。
             そういう柔軟な芸術理解こそ現代に生きる芸術の解釈でしょう。ほんとうの共産主義者ならば、そう思うのが当然でしょう。
             頼朝に銀製の猫の置物をプレゼントされても、ほいと子どもに与えてしまう無頓着な西行の甲斐性は、その経済的基盤にあっただけなのです。
             金持ちの芸術です。
             
             だから、序論だけ書いて終わります。
            文学ディスカシォーネ|-|-|-|-|by ネコスキイ

            革命詩人ハイネの革命

            2012.05.30 Wednesday
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              JUGEMテーマ:読書

               図書館をブラウジングしていると井上正蔵訳『ハイネ全詩集 全5巻』があり、ページをめくるごとに変化を感じます。
               ハイネの認識の発展という変化です。
               
               そのうえ、使用する言葉が平易(もっとも、日本語訳もそれに忠実にしているがゆえに)というのもわかります。
               また、当時の政治にこれほどコミットしている詩人もなかろうという感想も出てきます。
               とは言え、花鳥風月を歌えば革命的でないという考えにもくみしません。

               マルクスとの交友で相互に影響しあっているところをもっと研究したい気もします。
               「詩歌」が宣伝、扇動、組織者たりうるか。それはレーニンが言う「全国的新聞」や現在のフェイスブック、ツイッターに相当するのか。
               むしろ、そうであってほしくないのですが、政治に利用されがちな脆弱な芸術でもあります。
               
               「アラブの春」を現出した機材はフェイスブックだったともいわれます。
               その力を確信して、アメリカはシリアの反体制勢力に通信手段を提供し内政干渉しています。しかも、武器援助ではないという美名のもとです。
               振り返って「詩歌」の地位が低下している日本において、その役割は「詩歌」=「歌の力」になっています。
               
               
               
               たとえば、秋元康作詞でAKB48が歌っている『風が吹いている』の一節は、
               「この変わり果てた 大地の空白に 言葉を失って 立ち尽くしていた 何から先に 手をつければいい? 絶望の中に 光を探す」
               「溢れた 涙の分だけ 何かを 背負わせて欲しいよ 傍観者にはならない」
               「すべてを失って 途方に暮れても 確かに私は ここに存在する 前を塞いでる 瓦礫をどかして 今を生きる」

               すべてを引用できません。でも、どれだけ多くの人がこの歌詞に感動し、扇動されているか。
               「傍観者にはならない」
               「瓦礫をどか(す)」
               
               この2点だけでも、この歌は宣伝、扇動、組織者になっています。ただし、具体的行動は個々人の自発性に任されているので、「全国的新聞」ほどではないのです。
               にもかかわらず、ある方向性を創造する熱い巨大な力を、この詩歌はもっているのです。
               
               ところが、ハイネのように人間の発展を阻害する中心人物やその周辺に対しての暴露と攻撃がない。そこが、この詩歌の最大の弱点です。
               そういう攻撃を目的としないでは、実は歴史の傍観者に貶められ、瓦礫をどかすことさえできない。
               
               アメリカと大企業、それを擁護するゴロツキに抑えつけられた音楽文化の限界を、自ら自制し越えようとしないところに芸能界全体の大罪があります。
               いいところまで、誘っておいてウッチャるような音楽文化になっています。
               
               それに比すると革命詩人と言われるハイネは、攻撃性が違う。
               ハイネの名声で人を引き付け、ともにたたかいを呼び掛けるような吸引力をもっています。
               ハイネが現在に生きていたら、消費税や生活保護についての矛盾を、その推進勢力やマスコミとの関係で反撃していたでしょう。
               はっきり認識すべきは、今の政治が我々に対して攻撃を仕掛けているということです。それに対する反撃は正当防衛。
               
               ハイネの一節を引用して、今と比較してみましょう。そして、アメリカ・イデオロギーという犇気瓩鯑れ替えましょう。犇気瓩読めないというの言葉は、ある種の抑圧の言葉でもあるとわかるでしょう。

                 ぼくらは地上で幸福になろう。
                 もう、飢えて悩むのをやめよう。
                 働き者の手が獲得したものを、
                 怠け者の腹に飽食させてはならない。

                
                 あれ(ケルンの寺院)は精神のバスティーユになるはずだった。
                 そして、ずるい法王党の奴らは考えた。
                 「この巨大な監獄のなかで
                 ドイツの理性は弱り果てよう!」

                                     ・・・・・・・・・・ドイツ冬物語より

               

               

              文学ディスカシォーネ|-|-|-|-|by ネコスキイ

              希望としての笑い

              2010.10.11 Monday
              0
                評価:
                高橋 敏夫
                角川SSコミュニケーションズ
                ¥ 819
                (2010-09-10)
                コメント:井上戯曲小論で、本質論です。
                井上ファンにも目からウロコの連続!!
                井上ひさしが何を書き、どう生きて来たかがよくわかるようにコンパクトにまとめられている

                「武器としての笑い」から「希望としての笑い」に変化する情勢があるから、井上ひさしと言う作家が存在したと言えます。

                文芸評論家の高橋敏夫氏は井上ひさしを追悼して、新書を上梓しました。
                角川SSC新書から9月に出ています。
                この書には、丸谷才一氏は、井上ひさしのお別れ会で彼の文学的位置付けを試みたと記されてます。
                芸術派としての村上春樹、私小説派としての大江健三郎、そして、現在のプロレタリア文学派としての井上ひさし!
                この昭和初期から続く「三派鼎立」の平野謙の説が今でも有効なのかどうか、文芸の試練に待ちます。
                著者の高橋氏はこの説に共感しつつ、井上ひさしの業績を「変革の希望を、たえまなく生起させる笑いとして実現する」とまとめています。
                「泣くのはいやだ、笑っちゃえ」!日本を席巻したこの太い笑いは、ロシアの思想家ミハイル・バフチンだそうです。人に否定的状態をくぐり抜けるのを大胆に促す笑い!グロテスクで解放的な哄笑!

                盲人の権力欲を笑い飛ばした「藪原検校(やぶはらけんぎょう)」、原爆で生き残った“後悔”をユーモアとペーソスで綴った「父と暮らせば」、深刻な生活を背景に刻まれロシア帝国の没落と将来への希望を“喜劇”に結晶させたチェホフを描いた「ロマンス」、恨みの連鎖を断つことを訴えた「ムサシ」、プロレタリア派の流れを組む「組曲虐殺」など。
                自然に笑いころげる内容ではありますが、世界と社会に響き渡るような硬質の笑いでもありました!
                これぞ、疲れた日本に癒しを与え、どこに希望を見いだすか、世界のどこに自分が笑っているのか判別できるステージだったのです。(*^□^*)
                99%の絶望と1%の希望が人間の構成成分と認識する井上ひさしさんでしたが、そこに魅力を感じる人も多かったはずです。
                今も「丸い地球の水平線に、なにかがきっと待っている」と、希望を残してくれました!耳を澄ませば、あの歌が1964年から聴こえてきます。
                でも、あれから46年、地球の俯瞰地図を一般人が手に入れた現在、希望しかない!ことがわかります。絶望なんか、地球にない!希望に満ち満ちている緑の瑠璃色の青い地球なのです。ただ、細く道や切り立った崖の屹立におののくことがあるだけです。
                今年産まれた子どもは90歳で22世紀を見るのです。スゴい時代に生きていくのです。名古屋の会議はどうなろうと、さらば地球よとは言えないのですよ。地球が太陽の膨張に飲み込まれるまではね。\(^O^)/
                文学ディスカシォーネ|-|-|-|-|by ネコスキイ

                アリエッティとアンネと「乙女の密告」

                2010.08.02 Monday
                0
                  評価:
                  赤染 晶子
                  新潮社
                  ¥ 1,260
                  (2010-07)
                  コメント:無意識の「密告」に迫る。小さい「社会」派小説。

                  JUGEMテーマ:読書
                  アリエッティもアンネも14歳。
                  どちらも隠れて住んでいます。
                  アンネを密告したのは誰か?アリエッティは見つかってしまいます。
                  どちらも自分に属さない理由で住み家を追われてしまいます。
                  権利の大きな力や共存を許さない差別が、その背景にあり、その本質を犠牲者自身も気付かない歴史的制約もあります。
                  この「アンネ」とダブらせて、社会の圧力(大学内の特殊社会)のなかで、密告者にならざるを得ない状況を描いたのが最近の芥川賞なのです。
                  赤染晶子「乙女の密告」。主人公は、清純な乙女として描かれたアンネだけではなく、密告されるユダヤ人として捉えることを教えるドイツ人教授に、「圧力」を覚えます。
                  これが、ある事件の背景にあることを悟らないまま行動してしまいます。
                  その行動が尊敬する先輩を裏切ることになってしまうのです。裏切ることを意識しない行動です。
                  真面目だからこそできた行動が、社会的に許されないことになってしまう。
                  それが、ゲシュタポに密告する行動とダブらせて描かれます。
                  悪法も法なり!
                  ヤクザの正義!
                  ロールズの正義論!
                  サンデルの講義!
                  こういうものの小説化と言えます。
                  しかも、潔癖症の乙女の社会にメスを入れた斬新さがあります。
                  最近、「告白」が話題ですが、ああいう公的リンチも、この部類にはいります。
                  だだ、流行りだから正しいと言うわけではないのは、ナチズムやオウムを見ても明らかです。
                  こんな小説が受けるなんで、恐怖の社会を受け入れる国民的準備ができている証拠です。反面教師ならいいですが。
                  「アリエッティ」は、逆に人間という姿を借りて権力の雰囲気支配を批判しているように思いました。
                  ただし、哀愁しかないので残念でしたが。
                  文学ディスカシォーネ|-|-|-|-|by ネコスキイ

                  鎌倉の芥川龍之介

                  2010.08.02 Monday
                  0
                    評価:
                    芥川 龍之介
                    集英社
                    ¥ 360
                    (1991-03-20)
                    コメント:平穏な鎌倉で書いたとは思えない!!

                    JUGEMテーマ:学問・学校

                     芥川賞が発表されたので、ちょっと、鎌倉の芥川について調べたいと思いました。
                     以下は、これから調べる下調べの段階です。
                     さらに、ステップするための跳躍台。
                     レファレンスブックからのまとめです。


                     まず、図書館の参考図書の書架で「文学」の棚をブラウジングする。

                    1. 作品とその内的変化
                      すると、三つの芥川専門の事典が配架されている。それは、『芥川龍之介事典 増訂版』(注1)、『芥川龍之介全作品事典』(注2)、『芥川龍之介大事典』(注3)である。
                     また、全集に関連した資料を探すと『芥川龍之介全集総索引 付年譜』(注4)がある。『現代日本文学綜覧シリーズ26 全集/個人全集 作家名綜覧』などからたどっていくこともできる。
                    まとめると、芥川文学の初期は、説話文学をもとにした『羅生門』『鼻』など歴史物やキリシタン物が有名である。とくに、歴史物では、人間の内面、特にエゴイズムを描き出したものが多い、ことが分かる。
                    また、鎌倉で書いた作品を中心に調べると、

                     鎌倉市材木座で執筆したという『蜘蛛の糸』は多くは義務教育で習う。初出が児童文学の『赤い鳥』1918年作だからである。その創作ヒントは、最近はやりのドストエフスキー『カラマーゾフの兄弟』第七篇三「一本の葱」でロシア文学の影響であった。この作品については、専門家の間では過少評価される一方、巧みな構成への評価、再評価なども専門家の評価である(注2)。

                     また、『地獄変』執筆は、「大阪毎日新聞」連載であったが、公務多忙のため原稿が遅れていた。彼はこの時期、横須賀にある海軍機関学校勤務が本業だったからだ。この作品で、芸術至上主義的な面が全面に出た(注4)。

                     さらに、避暑に出かけた鎌倉の宿で芥川に出会った岡本かの子は小説『鶴は病みき』で、自殺に追いやった原因までも詳細に描いていることが分かる(注3)。


                    2. 文学史上の位置づけと評価・推移
                     ただ、これでは全体像が簡単には概観できないので、文学史関連からのアプローチするため、館内OPACで「文学史」を調べると、『日本文学史事典 近代編』(注5)『日本文学史 改訂新版 近代 』(注6)が存在することを知る。 
                    そこでわかったのは、

                     文学者としてのきっかけは、芥川が漱石門下で第四次「新思潮」の同人になり、作品『鼻』が漱石に絶賛されるところから始まる。大正文学の展開の中で「白樺派」に対する態度、プロレタリア文学への態度などが問われるなか、「ぼんやりした不安」から自殺。その本当の理由は、経済的不安であってと断じた平野謙の主張がある(注5)。

                     さらに概観すると、芥川の文学史上の系譜は、森鴎外・上田敏の主知精神と、この二人に泉鏡花を合わせた芸術主義、生活と芸術を結びつけ倫理性をあわせた漱石を受け継いだものである。しかし、不合理な世の中(『羅生門』に表れている)に生き延びるための背骨が欠けていた芥川は「観念論の行き詰まりを身をもって体した時代の犠牲者」(唐木順三)だったのである(注6)。


                    3. 作家研究の歴史と今後
                    さらに、もっと本格的な業績研究の資料がないか探すと、『明治・大正・昭和 作家究大事典』(注7)があり、研究成果や今後の方向まで示されていることが分かった。
                    芥川の文学上の業績を、このような概観できるのは、芥川研究の画期をなしたといわれる吉田精一氏の論文があるからである。しかし、まだ、芥川文学の原点が何か、芸術観の変遷、プロレタリア文学に対する姿勢等についての未踏の研究分野があることまで、わかった。
                     また、『作家名から引ける日本文学全集案内 第挟』(注8)に、作品一覧や収載されている全集、掲載された批評文などの雑誌などについて一覧になっているので、新たに調べる場合は、この書誌を渉猟することもできる。

                    参照したレファレンスブック(注1〜注8)の編集目的

                    (注1)『芥川龍之介事典 増訂版』菊池弘ほか編著、明治書院、2001年
                    多角的な観点から芥川龍之介に光をあてている。作品はもとより、関係した人物・場所・学校・雑誌・新聞、その上に「芥川用語」なるものについてまで解説している。始めに生地や幼年時代の写真、初版本や最後の公演の写真、自筆原稿、有名な河童の挿絵などイメージが豊かになるよう構成されている。他にない詳細な年譜があり、歴史と合わせて作品や人生と業績を読むことができる。

                    (注2)『芥川龍之介全作品事典』関口安義・庄司達也編、勉誠出版、2000年
                    全作品を対象とした事典。書誌的事項が正確に押さえられ、問題提起が鮮明であり、「読んで面白い」ことを目指している。作品を読む手がかりを得るために編集されている。

                    (注3)『芥川龍之介大事典』志村有弘編、勉誠出版、2002年
                    この事典は、文学者芥川龍之介だけでなく、人間芥川龍之介をも詳細に調査したものである。一般項目篇では、芥川龍之介と交流のあった人物や出版社などについて詳細な説明がある。一般項目篇と作品篇、芥川龍之介文献目録、芥川をモデルとした文学作品、芥川龍之介文学・単行本収録作品一覧を収録している。

                    (注4)『芥川龍之介全集総索引 付年譜』宮坂覚編、岩波書店、1993年
                     「最も注目すべき20世紀の文学の一つとして読者の関心を呼び、新鮮な問題意識を投げかけている」(まえがき)芥川龍之介の文学として、あらたな全集が刊行された際につくられた全集の索引。年譜が物語風で作品が、人生のどの時点で書かれたかがわかる。

                    (注5)『日本文学史事典 近代編』有精堂編集部編、有精堂、1994年
                     「個々の作品・作家研究を全体的に俯瞰し有機的な関連性を捉える」(はしがき)必要からこの文学史が編まれた。単なる辞典でも論集でもない、論文として読むことができると同時に索引から目的の主題・事項を探せる。

                    (注6)『日本文学史 改訂新版 近代 』久松潜一編、至文堂、1966年
                    かなり古いが、新しい本と比較して文学研究の前進を知ることもできる。芥川龍之介の文学人生を2ページに簡単に要約し、作品の精神的前進と芥川作品・作家批評をあざなえる縄のように結びつけた文学史。作家の業績を簡単に知る手掛かりとなる。

                    (注7)『明治・大正・昭和 作家研究大事典』重松泰雄監修、桜楓社、1992年
                    「近代文学の考究に志ふかい新たな読者・研究者のため」(諸言)に企画されている。作家ごとに、「作家概要」「研究史の展望」「研究の現状と指針」「参考文献要覧」を配している。また、雑誌掲載の批評文が雑誌名、発行日付で一覧になっているところが、他にない。

                    (注8)『作家名から引ける日本文学全集案内 第挟』日外アソシエーツ編、紀伊国屋書
                    店、2004年
                    多種多様な文学全集の内容を通覧し、この場合、作家名から収載全集を調べられるよう工夫されている。芥川龍之介の作品なら、どの全集やアンソロジーに収録されているかを示されている。
                     
                    文学ディスカシォーネ|-|-|-|-|by ネコスキイ

                    井上ひさし「1週間」単行本

                    2010.07.01 Thursday
                    0
                      評価:
                      井上 ひさし
                      新潮社
                      ¥ 1,995
                      (2010-06)
                      コメント:「吉里吉里人」に匹敵する面白さ。だそうです。
                      Amazonランキング: 381位

                      JUGEMテーマ:読書
                      「小説新潮」に連載された作品「1週間」が、やっと単行本化されました!
                      井上ひさし最期の単行本。\(^O^)/
                      2010年6月30日、新潮社から発行されました。
                      帯には、最後の長編小説、『吉里吉里人』に比肩する面白さ!だとの言葉があります。
                      シベリア抑留の話ですね。最近、民主党政権になって抑留者に対する補償がなされるとのニュースを小耳に挟んだところに、この本が単行本化されました。商魂逞しい勇ましさ!
                      嬉しからんや。
                      連載を読むのがままならなかったので、これを読んで笑いと皮肉の嵐を腹に詰め込んで満足したいです。 パラパラみていると気になる文章がありますね。
                      「レーニンの背信」「レーニンの手紙は破かれた」など。中身は読んでからのお楽しみです。
                      同時に井上ひさし『全芝居その六』が発売されました!
                      そして今日、7月1日、お別れ会が開かれ、劇中の音楽が歌唱されたそうです。
                      文学ディスカシォーネ|-|-|-|-|by ネコスキイ
                       
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