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図書館経営論 ノート

2010.10.31 Sunday
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    JUGEMテーマ:学問・学校

     1. 公共図書館の崇高な意義・使命
    公共図書館の意義・使命は、図書館法の主旨(注1)やユネスコ公共図書館宣言の理想(注2)から考えるならば、‐霾鷁充匆颪篝験恭惱に対応するために、その推進力になることが公共図書館の役割である。⊃佑鼎り・街づくり・“時代を創る”役割の中心の一つとしての公共図書館が重要な役割を果たす(注3)。自ら考え判断し行動する市民の民主主義のため、地域の情報拠点となる公共図書館が絶対に必要である。

    2. 競合する施設・サービスにも“公共性”があるが、部分的である。
     逆に、以上の役割を果たさないならば、公共図書館とは言えない。
    ところが、この意義・使命を果たすのは公共図書館だけか?というとそうではない。公共図書館はそのための必要条件であって十分条件ではない。競合する施設・サービスがあるからである。ともすれば、図書館の未利用者はこちらに流れることもあり、その意味では市民の税金で運営している以上、公共図書館の自己アピール、批判に耐えうる説明責任(アカウンタビリティー)を果たす必要がある。
     競合する施設との違い
    「国立国会図書館」は基本的に国会及び図書館の図書館であり、「学校図書館」、「大学図書館」、「専門図書館」、「病院図書館」、「刑務所図書館」は、大半は対象者が構成員関係者であり対象が限られている。
    出版社は約4300社、書店は全国に約15000店(2009年10月現在 注4)あるが、新刊書を取り扱うことが重点で、当然、有料である。これに対して、公共図書館は約3144館ある(注5)が、著作権上の制約があって新刊本・CDに即応できない(複本問題があるがここでは扱わない)。
    古書店、インターネット通販専門店は在庫100万冊を超える在庫を抱える店もあるが、有料であり閲覧・コピーは基本的にできない。ネット書店(Amazonなど)も注文・即配達の利便性が高いが書店と同じである。
    図書館類似施設(情報館など)は、図書館法にかかわりなく指定管理者に全面的な委託を行うことができ、法律的には公共図書館の使命を果たす必要はないが、館数が少ないため全域サービスにならない。
     競合するサービスとの違い
    電子図書館(「青空文庫」など)は、著作権が終了した書籍等を公開しているが、著作権のあるものについては対応できない。新聞横断検索(G-searchなど)、検索エンジン(Google、Yahoo!など)、フィルム・アーカイヴスなどは、情報サービスやレファレンスに即応できるが、自宅・会社で物理的にネット環境にない大半の市民や障害者・高齢者等に対応できないため、生涯学習の使命に全面的に耐えず、資料の信ぴょう性に問題があるものもある。また、情報サービスとして中小企業振興センター、医療相談センター、子ども電話相談もあるが、全市民に対する総合性はなく、逆に資金貸付、悩み相談などは図書館とは違う目的が生じる。
    これらに対して、一般的に、図書館サービスの種類は、閲覧、貸出、レファレンス・サービス、予約・リクエストサービス、読書案内、デジタル情報サービス、カレントアウェアネスサービスなどがあり、かつ、公共図書館の公的意義は先にあげたもので、生涯学習での施設としても位置づけられるのだから、これを満たす施設・サービスは公共図書館以外にない。つまり、競合する施設・サービス、いわば図書館サービスの「専門店」にも“公共性”はあるとしても、部分的であると言える。公共図書館は知恵のコンシェルジェなのである。

    3. 経営的視点に立った公共図書館の「意義・使命」への変革
    そこで、公共図書館は「量」または「質の専門性」「新刊入手速度」で、これらの「専門店」には勝てないとしても、全市民的・全域的「サービス」の窓口という視点から考えると、競合とは言っても、競争ではなく共生と協力が必要となってくる。ある部分は図書館のアウトソーシングにも使える。また、予算的に、経営的に、政策的にうまくいっている図書館ばかりではない。
    これらが示すことは、情報化社会、生涯学習社会の時代になって「1.」の公共図書館の「意義・使命」の経営的視点からの変革が迫られているということでもある。
    そこで、公共図書館の意義・使命を経営的観点から再定義する。
    (1)まず、生涯学習の支援の観点から、著作権法など守備範囲を法的にも明確しつつ、インターネット端末の増設で情報入手方法を増やすことや、司書やコンピュータに詳しい専門家の配置をすることが大切である。また、高額のコンピュータやネットワーク、維持費、電子情報入手のための予算措置等をすることが求められる。この予算獲得の際にはPR(宣伝とパブリシティ)が必要であり、関係者が納得できうる理論の構築、費用対効果の説明などが求められる。そこに、「『思想、価値観』を売り物の対象にする社会的マーケティング」(注6)が不可欠の要素と言われる。
    では、図書館におけるマーケティングとはどのようなものか。ビジネス支援サービスを事例として考えると、‐霾鵐機璽咼垢亮鑪爐梁燭機△匹譴世韻諒幻イ検索対象となるか、ビジネスマンへの書斎機能の提供など、▲機璽咼溝于舛悗糧駘冑蘆瓦療正化と公正さ、C鷦崗譟▲機璽咼校間、サービス提供時間など、ぅ機璽咼慌礎佑離拭璽殴奪函淵咼献優校抉腓魑瓩瓩訖諭砲紡个垢訶礎、という4つの仕事があげられる(注7)。NPOへの支援も同様に考えられる。
    (2)また、人づくり・街づくり・時代創りの観点からの協力は、館種の違う図書館とのネットワーク、情報交換が必要である。特にビジネス支援は最新の情報が必要とされるため、電子情報の検索方法などの知識・技術も必要になってくる。サービスは、本に限らず音・映像もあるため著作権処理についての専門的知識も図書館員には求められる。
    この点では、ビジネス支援で街づくりを成功させた浦安市立図書館のように図書館“管理”から図書館“経営”の手法が求められ、その一つの典型がNPM(New Public Management)である。NPMは、仝共サービスに市場メカニズムを導入(民営化、民間委託、指定管理者制度、PFI導入)、∈睫害餬彑度と公務員人事制度の改革(発生主義会計や貸借対照表の導入、業績評価主義の導入、任期付職員登用など)、6叛喇床措衙,粒発、じ楜匱腟舛良顧屐紛ゝ襯汽ぅ匹ら顧客サイドのサービス評価)をいう(注8)。
    PFI(Private Finance Initiative)の意味は、「民間の資金や経営手法のノウハウ等を活用して、社会資本を整備する手法」(『図書館情報学用語辞典 第3版』)であり、この手法を2004年日本で初めて取り入れて三重県桑名市立中央図書館が開館した。市と業務受託業者との役割を明確にし、「業務要求水準書」で市が提案、管理運営は業者、講座などは市の仕事となっている。VFM(Value for Money)が高まること、競争でアイデアや工夫が生まれるといわれている(注9)。
       指定管理者の実践としては、高山市図書館・煥章館(新図書館)など多数の例が報告されているが、行政と違うのは予算主義でなく決算主義であり、「事業の硬直化・マンネリ化・事業効果の軽視」ではなく、つねに結果を視野に入れた小回りの利く運営が可能とされる。次年度の業務のために利用者の満足度の把握が不可欠であり、顧客主義が徹底される(注10)。
    (3)さらに、民主主義や「公共性」のためには、以上のサービスを全面的に展開する図書館政策及び図書館情報政策が必要なので、議会や図書館協議会などへのアプローチ・説明手法の研究が欠かせない。「無料原則」という分野は、書店やネットではできない違う次元のものであるが(フリーペーパーとネット検索は別)、この思想の維持のための住民への説明は絶対怠ってはならない公共図書館の重要な任務でもある。それは(1)で述べた「社会的マーケティング」と重なる。
    ただし、この分野は法律で明確な根拠がすでにある。|亙自治法第1条の2では、「住民の福祉の増進を図る」と規定され(注11)、⊆匆餠軌號‖3条では、「社会教育の奨励に必要な施設の設置及び運営、集会の開催、資料の作製、頒布その他の方法」で、「すべての国民があらゆる機会、あらゆる場所を利用して、自ら実際生活に即する文化的教養を高め得るような環境を醸成する」ことを目標として、8共図書館は、図書館法第1条で、「図書館の設置及び運営に関して必要な事項を定め、その健全な発達を図り、もつて国民の教育と文化の発展に寄与することを目的」として、第17条で「公立図書館は、入館料その他図書館資料の利用に対するいかなる対価をも徴収してはならない」と定められている非営利組織の分野である。
    しかし、これらの難しい条文の意味・真意を広報誌等で全市民的に解説し、ある部分は「タダ」で情報を与えることにたいする利害関係者との調整や選書をめぐる圧力団体からの危機管理も必要であろう。
                                     (以上3569字)

    (注1)図書館法第1条
    (注2)ユネスコ公共図書館宣言 1994年「公共図書館のサービスは、年齢、人種、性別、宗教、国籍、言語、あるいは社会的身分を問わず、すべての人が平等に利用できるという原則に基づいて提供される。理由は何であれ、通常のサービスや資料の利用ができない人々、たとえば言語上の少数グループ(マイノリティ)、障害者、あるいは入院患者や受刑者に対しては、特別なサービスと資料が提供されなければならない」
    (注3)『未来をつくる図書館—ニューヨークからの報告』(菅谷明子著、岩波新書837)
    『浦安図書館にできること』(常世田良著、2004年、勁草書房)より
    『時代を創る図書館』神奈川県自治総合センター、2003年、p78-p133 
    (注4)日本著書促販センター・ホームページより
    (注5)『日本の図書館 統計と名簿』(2009年)より
    (注6)『図書館経営論』柳与志夫著、学文社、2007年、p124
    (注7)同、p126-p128
        『図書館・情報センターの経営』高山正也編、勁草書房、1997年、p189-p198
    (注8)『地域の情報ハブとしての図書館−課題解決型の図書館を目指して−』図書館をハ
        ブとしたネットワークの在り方に関する研究会、2005年
    (注9)『図書館の活動と経営』大串夏身編著、青弓社、2008年、p140-p153
    (注10)同上、p172
    (注11)地方自治法第1条の2「地方公共団体は、住民の福祉の増進を図ることを基本として、地域における行政を自主的かつ総合的に実施する役割を広く担うものとする」

    図書館学私論|-|-|-|-|by ネコスキイ

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