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図書館概論 ノート2

2010.10.31 Sunday
0
    評価:
    佐々木 俊尚
    ディスカヴァー・トゥエンティワン
    ¥ 1,155
    (2010-04-15)

    JUGEMテーマ:学問・学校

     図書館概論 「現在の図書館員の役割」ノート

     公共図書館を中心に述べる。
    1. 図書館を取り巻く現状

    (1)公共図書館数は2000年〜2009年で約120%増加、貸出点数も約132%増加している(注1)。情報化社会、生涯学習社会に応じて増え続け、国民のアクセス権を保障する機関としてさらに重要性を増している。一方で、図書館資料費の大幅な削減などで「貸出」という市民の要望に十分こたえられない現状もある。
     また、司書が一人しかいない公共図書館は全体の半分ということは、もう一方の任務、レファレンスサービスが全体として疎かである証明である。全員が司書資格をもつ浦安図書館の活性化と対比して分析すべきときであろう。
    (2)図書館は、経営等の委託化で効率的な図書館運営を志向している。指定管理者制度を導入して成功している公立図書館もあれば、そうでないところもある。成功していないところは、より安上がりの経営のみに終始した行政の責任を指摘する向きもある(注2)。
    (3)現在、公立図書館では、情報化社会の急進展に即応するだけのインターネット端末は少ない。だが、モバイル端末の接続端子を備えた閲覧机も増えている。また、電子出版しかない書籍ならコレクションにするかどうか、という新たな判断が必要となってくる(注3)。

    2. 図書館員の果たすべき役割
     「図書館サービスは、職員の手によってなされる」(注4)との原則は、その専門性に力点があると考える(ただし、司書の専門性を疑問視する研究者もいる。 注5)。「職員」が司書有資格者であるかどうかは、以上の公共図書館を取り巻く現状に対して、「図書館員」はどうあるべきかともかかわってくる。
     そこで、(1)図書館員の専門性の発揮、(2)情報リテラシーの高度化(3)図書館政策の立案、に絞って、その役割を考える。

    (1)専門性の発揮
    たとえば、図書館員は、「読書相談」や「レファレンスサービス」に対して、専門職として図書資料に関する知識や探索技術を駆使して、利用者の要望にこたえる必要がある。
     また、公共図書館の存在する地域や住民から要望されるであろう傾向を事前につかんでおくことも求められる。
    しかし、ネットサイトでは、たとえば、「教えてgoo!」400万件、「Yahoo!知恵袋」2500万件のQ&Aが掲載されている(2009年4月)。これらは問題解決の糸口となる答えがあり、正答率も所要時間もレファレンスサービスと大差がないという(注6)。
    だから、これからは図書館員にもネットとは違う親切さや即応性はもちろん、専門性・独自性・地域性・連携プレーが図書館員に求められていると言える。
    この課題に対して、図書館関連予算が削減されるなかで注目されるのは「図書館ネットワーク」である。群馬県では県立図書館が音頭をとり、情報・物流・人の3つの観点からネットワークを構築していることが報告されている。「人」に限ると県立図書館員が市町村の図書館に出向き、専門家として情報交換やコンサルティングを行い図書館員どうしのモチベーションを揚げていることが特筆される(注7)。それが情報、物流(図書の相互貸借など)にも好循環をもたらしている。図書館員の専門性を活かした図書館サービスの一典型であることを期待したい。
    また、そういう情報交換に全国から寄せられる経験を積載して、ビジネス支援、ものづくり支援、最近では求人情報、子育て支援に対応できる総合的な力量をもつ図書館員のタレントを養成していくことも必要になってくる。

    (2)情報リテラシーの高度化
    さらに、そのような多様なレファレンスに対応するためには、印刷資料(マイクロ資料や映像を含む)だけでなく、電子ジャーナル、データベースの使用方法を利用者に教授することが、図書館員にも求められる。そのための研修が図書館員に必須である。ワード、エクセル、パワーポイント使用能力を就業条件として、情報検索基礎能力試験、基本・応用情報技術者資格や知的財産権の知識やスキルなど、適宜、司書のスキルアップを図る配慮が具体的に必要な時期になっている(注8)。
     特に、近年利用が高まっているビジネス支援分野では、「 崙表顱廖岾惱」といった従来の図書館イメージを変えるのに役立つ、関係法規・基準の精神に合致、8共図書館を課題解決型の図書館に変える契機となる」と言われている(注9)ため、これらに対応する技術をいち早く吸収しないと図書館を見限られる。だから「司書の資料・情報検索支援は、・・・きわめて有効・有益なもの」(注10)なのである。

    (3)図書館政策の立案 
     以上のようなレファレンスの在り方、情報リテラシーの向上のためには、一図書館員と言えども図書館政策を考えることなしに、現状を打開できない。トップダウン政策に終始していては市民に直接触れる図書館員との双方向型図書館になりえない。民間から派遣された司書であっても、現場の図書館員こそストラテジー、マネジメント、テクノロジーの基本に習熟すべきである。
     「公共図書館は部分でありながら、全体を支える役割を果たす」。つまり「それは不偏性をもつ情報・知識を扱い(共通性)、誰でも利用することができて、集うことができること(公開性)、公的な資金や組織の支えがある(公式性)」の3要素をもつ珍しい文化・情報施設である。そして、それを成り立たせるための前提として、「公平性」を積極的に創る姿勢が公共図書館と図書館員に求められている(注11)と言えるからである。

    (注1)日本図書館協会ホームページより
    (注2)『千代田図書館とはなにか』柳与志夫著、ポット出版、2010年、p185
    (注3)『電子書籍の衝撃』佐々木俊尚著、ディスカヴァー携書048、2010年 参照
           『改訂 図書館資料論』平野英俊ほか編、樹村房、2009年、p142
    『時事通信』2010年6月17日20時1分配信記事
       「全82巻の大型全集が約700グラムに―。講談社は25日から刊行を始める電子書
    籍版「小田実全集」をアップルの情報端末「iPad(アイパッド)」に対応させるこ
    とを17日までに決めた。専用の閲覧ソフトを今秋公開する。iPad対応の作家個人
    全集は国内初」と報じている。ちなみにこれば、全巻で7万8750円。オンデマン
    ド版の紙の本は全巻31万7415円と3分の1の値段になり、図書館情報政策の価
    値判断が問われていると思う。 
    (注4)『図書館概論』高鷲忠美著、八州学園大学、2010年、p33
    (注5)『公共図書館の論点整理』田村俊作・小川俊彦編、勁草書房、2008年、p115
    (注6)「Q&Aサイトと公共図書館レファレンスサービスの正答率比較」、『図書館界』Vol.61 
    No.6  March (通巻351号) 2010 所載論文
    (注7)「群馬県の図書館ネットワークについて」中村晃一郎、『みんなの図書館』2010年
    4月、p10-18
    (注8)『地域の情報ハブとしての図書館−課題解決型の図書館を目指して−』図書館をハ
    ブとしたネットワークの在り方に関する研究会、2005年、p20、p69
    (注9)『公共図書館の論点整理』田村俊作、小川俊彦編、勁草書房、2008年、p43
    (注10)文部科学省ホームページ「司書によるレファレンスや情報検索機能―利用者問い
    合わせに対する文献調査機能」
    「司書の資料・情報検索支援は、具体的にどのような情報を検索したらよいか情報検索内容が不明な利用者や情報検索の機会や能力が不十分な利用者にとって、きわめて有効・有益なものである」としている。
    http://www.mext.go.jp/a_menu/shougai/tosho/houkoku/05091401/005.htm(2010年6月18日閲覧)
    (注11)『千代田図書館とはなにか』柳与志夫著、ポット出版、2010年、p190

    図書館学私論|-|-|-|-|by ネコスキイ

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