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図書及び図書館史 ノート2

2010.10.31 Sunday
0
    評価:
    前川 恒雄
    筑摩書房
    ¥ 1,890
    (1987-04)

    JUGEMテーマ:学問・学校

     図書及び図書館史 ノート

    日野市立図書館の日本図書館史における意義

    1950年代後半の「昭和の大合併」後、日本図書館協会は、3カ年で全国71館の図書館のサンプリング調査をした結果、1963年に最終報告『中小都市における公共図書館の運営』(以下、「中小レポート」)の完成を見た(注1)。そのフィードバックされた理論の実践(実験でもあった)として、日野市立図書館の実践がある。 
    これは、「中小レポート」まとめの中心的人物が、日野の行政や図書館行政に直接タッチする機会を得たことと符合する。

    1. 一般的評価と意義
    日野市図書館は、最終的に分館、移動図書館、中央館で構成され、市民のあらゆる情報要求に応えた。とくに、移動図書館(BM)は、市内全域に図書館サービスを行き渡らせ、その勢いは「書庫が空になる」と言われた。そうやって住民の知識要求を高めることで、最後に中央図書館を完成させ(1973年)、高まるニーズに見事に応えた。「健康保険制度が肉体の健康における社会保障であるように、精神や教養の面での社会保障が図書館」(注2)だったのである。
    先の「中小レポート」の有効性を実証しつつあった日野市の実践を受け、日本図書館協
    会は全国を調査研究し、その報告書を手引きにして公刊したものが、『市民の図書館』(1970
    年、図書館協会)だった。いわば日野市の実践を受けた「中小レポート」の理論的発展で
    あった。
    この“手引書”は「市立図書館は全市民に奉仕する」義務を負うことを明記して、年齢を問わないサービス、特に児童サービスが成人と同様に行われることを求め、また、サービス網の充実、レファレンス・サービス、インフォメーションセンターとしての機能のさらなる充実が必要と提言した。浦安市中央図書館は、「知識と情報の提供」で人を呼ぶ街づくりに貢献したが(注3)、これは日野の実践を受けた『市民の図書館』の目的「図書の提供」の発展形態であると言える。

    2. 現在の図書館への影響
    1967年に文部省社会教育審議会施設分科会が、「公立図書館設置および運営の基準(案)」を承認したが、時期的に考えても、これは「中小レポート」、日野市の実践を受けたものと言える。また、2001年の「公立図書館の設置及び運営上の望ましい基準」(文部科学省 注4)にも影響している。
    ここでは、特に、紙面の関係で、日野市立図書館実践の影響やその発展的形態について、(1)鎌倉市立中央図書館(ホームライブラリー)、(2)千代田区立図書館について比較しつつ述べたい。

    (1)鎌倉市立中央図書館
    鎌倉市は人口17万の中規模の都市であり、日本の四大古都の一つ、世界遺産登録を推進している都市でもある。
    鎌倉市の図書館に特筆される特徴は、市民が貸出登録をしている率は同規模都市(小田原、海老名、伊勢原など)と比べて2割近く高い(70.8%)ことである(注5)。  
    来年100周年を迎える神奈川県で最古の近代図書館として、今年から図書館の歴史や在り方、自由についてのキャンペーンを行い、〇毀荏澗里悗両霾鵐機璽咼垢鯊佞蕕覆ぁ↓⇒料から無料への変化の歴史、児童サービスなど、絵にかいたように日野経験の鎌倉的展開の具体的実践をパネル展示している。特に、人口の7割が図書館登録をしていることには驚きを隠せない。日野市の「市域全体へ」のサービス思想は十分影響をうかがえる。

    (2)千代田区立図書館
     日本図書館協会の常世田良事務局次長(元浦安図書館長)は、「図書館の数はこの10年間で約20%増えています。ハコモノ行政が減っている中で、図書館だけが唯一増えている。図書館のニーズが、どの町でも高く、利用率も高いからです」と新聞のインタヴューに答えている(注6)。
     この新聞がとくに注目したのは千代田区立図書館であり、「司書資格を持つスタッフ20人が資料調査やビジネス支援などの相談に乗っている」(広報チーフ)という。
    『市民の図書館』編著の中心的役割を果たした前川恒雄氏(元日野市立図書館長)は、貸出の推進とともにレファレンスが図書館奉仕の二本柱だと言った(注7)。だが、この原理原則は、この千代田区立図書館(注8)のように一部ではあるが本格的な情報化社会、ユビキタス社会に到って開花したといえる。


    (注1)『図書及び図書館史』小黒浩司編著、日本図書館協会、2010年、p109-p121
    (注2)『図書館史―近代日本篇』小川徹、山口源治郎著、教育史史料出版会、p185−p189
         (日野市立図書館「業務報告 昭和40、41年度」、前川恒雄「移動図書館ひまわり号」
    筑摩書房、1988年)
    (注3)日本図書館協会ホームページより(2010年7月31日参照)
        http://www.jla.or.jp/kijun.html
    (注4)『浦安図書館にできること』(常世田良著、2004年、勁草書房)参考文献
    (注5)『鎌倉市の図書館』(平成20年度事業報告)資料編 p46
    (注6)2010年6月22日付『日刊スポーツ』20面(東京ナビ〜ビジネスリポート)
       この特集では、千代田図書館、葛飾図書館、文京図書館を取材している。ちなみに
    「日刊スポーツ」の発行部数は200万部(2002年)と言われ、スポーツ紙では最も
    多い部数である。
    (注7)『われらの図書館』前川恒雄著、筑摩書房、1987年 p 56-p64,
    p236「二つの役割」より、「図書館の機能は資料・情報の提供であり、その方法は、貸出し、レファレンスと文化活動である」と述べている。
    (注8)『千代田図書館とはなにか』柳与志夫著、ポット出版、2010年 参考文献

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