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図書館資料論 ノート2

2010.10.31 Sunday
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    JUGEMテーマ:学問・学校

     高度情報化社会における図書館資料の価値

    1. 図書館資料の種類と意義の変化
    従来の図書の意義は「読みながら考えたり、一度読んだところに再度戻ったり、読み比べたりといった反復の過程を可能にする・・・・(そして)この過程が深い思索と批判的思考を可能にする」(注1)ところにある。
    図書は、公共図書館では資料費の80%を占める。また、伝統的な印刷形態の図書についても高度情報社会にあって、見直されるべき部分もある。それは、〇刻表、為替レート、図書館目録など、統計データ等、K椶篋酩覆陵儻貂引等である。
    したがって、伝統的図書、パッケージ系電子出版物(CD-ROM、DVDなど)、ネットワーク系メディアのそれぞれの特徴を生かしながら、棲み分ける必要がある(注2)。
    また、ネットワーク情報資源に関して、基本的には、図書館からのネット・リンクサービスを構築することが高度情報化社会において不可欠になっている。
    具体的には、〔槝拭⊇饂錙∈引など二次情報データベースとして、自館・他館のOPACや新聞横断記事検索など、▲ンライン出版、電子ジャーナル、ネット配信など、E纏匆修気譴慎録・文書類、ね益な情報源サイト、特にこのURLを一覧すれば、信頼できるサイト情報を市民のために提供するものがある。これらは、図書館サービスの利用率を高める。(注3)(注4)。
    だが、これらは従来の紙媒体の図書、マイクロ資料、視聴覚資料などの価値を減ずるものではない。

    2. コレクション構築のプロセスの在り方の変化
     図書館コレクションの概念は、「図書が中心である印象の強い『蔵書』に代わって、より多様な資料の集積」(注5)と定義も変化してきている。インターネットの発展や電子資料、電子書籍が飛躍的に増加している現在、「図書館のコレクションの概念をどう考えていくべきかは、これからの重要な課題」(注6)となってきているのである。
     新聞は「全82巻の大型全集が約700グラムに―。講談社は25日から刊行を始める電子書籍版「小田実全集」をアップルの情報端末「iPad(アイパッド)」に対応させることを17日までに決めた。専用の閲覧ソフトを今秋公開する。iPad対応の作家個人全集は国内初」と報じた(注7)。これは、全巻で7万8750円。オンデマンド版の紙の本は全巻31万7415円に比して3分の1の値段になり、図書館コレクション構築する際、予算やスペース問題で経営計画に影響すること必至である。
    公共図書館においては、「従来行われてきたサービスを続けつつ、それと同時に、これまで不十分であったレファレンスサービス、課題解決・調査研究の援助、時事情報の提供、専門的資料の提供、勤労者へのサービス等を充実させるべきである。これらを実現するためには、図書館の経営方針や、資源配分の優先順位と比率の見直しが必要である」(注8)と言われる。
    この提言にしたがうなら、コレクション構築の在り方変革が喫緊の課題である。

    3. “電子書籍”元年のショック
    「日本の出版業界では「今年は電子書籍元年」とも言われる。国内の市場は2008年度は約464億円だが、5年後には3千億円規模になる可能性があるとの予測もある。成長をさらに加速させそうなのが読書専用端末の普及だ」(注9)。
    これだけでは市場が5倍になるとの見通しだけで、図書館との関連が見えない。しかし、韓国では、2011年度からは小・中・高校で全ての教科書を電子書籍で提供する「電子教科書」を導入するかどうかを決定する見通しである(注10)というニュースを聞くなら、図書館コレクションにおいて“黒船”の存在と大革命の予感を覚える。
    公立図書館では、2002年北海道岩見沢市立図書館が電子書籍の閲覧サービスを始めたが、需要が少なかったため取り止めとなった経験があるが時代は変わった。早急にコレクション概念のパラダイムを転換すべきである。
     私は、従来の図書館コレクションをしつつ、別の大きな収集分野として確立すべきだと考える。

    4. 図書館資料に対する価値観の変化

    (1)高度情報化社会になれば図書館資料の価値が高まる
    こう考えてくると、図書館全体としてのニーズが高まる分、図書館資料の価値がなお一層高まると言える。
     このニーズの増大について、新聞のインタヴューに対して日本図書館協会の常世田良事務局次長(元浦安図書館長)は「図書館の数はこの10年間で約20%増えています。ハコモノ行政が減っている中で、図書館だけが唯一増えている。図書館のニーズが、どの町でも高く、利用率も高いからです」と答えている(注11)。
     この新聞特集がとくに注目したのは指定管理者制度導入で、民間のヴィアックス社に窓口から運営まですべてを任せた千代田区立図書館である。千代田区図書館は「司書資格を持つスタッフ20人が資料調査やビジネス支援などの相談に乗っている」(広報チーフ)という。
     これは、「これからの図書館の在り方検討協力者会議」が提案した「レファレンスサービス、課題解決・調査研究の援助、時事情報の提供、専門的資料の提供、勤労者へのサービス等」への資源配分の傾斜に成功した例である。ここでは、このサービスに対応した図書館資料をコレクションしていることも背景にあることを見逃せない(注12)。

    (2)「課題解決」のための図書館資料の需要増
    「課題解決型」支援サービスについて考える。成功事例は千代田区以外にも様々に報告されている(注13)。 しかし、一口に課題解決と言っても地域によって要求や課題に違いが生じる。日本一のオフィス街の千代田区立図書館と高齢者の多い地方の町立図書館とは要求や解決すべき課題が全く違うからである。少し例をあげる。
     滋賀県愛知川図書館は、貸出利用冊数制限を設けていない。多様な資料要求にこたえることを基本姿勢とし図書館ネットワークでも対応する。「町の情報庫」となることを目標に、集落の自治会だより、町内のミニコミ紙、新聞の折り込み広告なども収集している。
     三鷹市立三鷹駅前市図書館は、「SOHO CITY みたか構想」政策にそって資料をコレクションしている。
     東京都立中央図書館は、Eメールによる「ビジネスレファレンス通信講座」を開催、法テラス発足に対応して法律情報サービス、健康・医療情報サービスを実施している。
     鳥取県立図書館も、レファレンス回数の3分1〜4分1が健康・医学関係を占めていたことを反映して、健康情報サービスを実施し、「闘病記文庫」を設け、健康に関するパンフレット棚を設置している。
     これらの一端を見ても、高度情報化社会になるにしたがって、図書館の役割はたかまり、電子化されない「生の情報」への欲求もたかまっていると見るべきである。
    図書館資料に対する価値観の変化が、図書館資料の価値を高めていると言える。
    高度情報化社会にとって、電子化資料であろうとなかろうと、課題解決のために図書館資料に対する期待はますます高まる。

     
    (注1)『講座 図書館の理論と実際 ▲灰譽ションの形成と管理』三浦逸雄・根本彰著、雄山閣、1993年、p33-34
    (注2)『改訂 図書館資料論』平野英俊ほか編著、樹村房、2009年、p24-p25
    (注3)このことに関連して、図書館資料の「対価不徴収」原則(図書館法第17条)を尊重しつつ、電子化情報サービスについては「図書館資料の利用」をこえるサービスになるとの解釈をして、電子化情報サービスの対価徴収については図書館設置者の地方自治体の裁量に委ねることになった。生涯学習審議会の図書館専門委員会「図書館サービスの多様化・高度化と負担の在り方について」(1998年)『図書館資料論』後藤暢著、教育史料出版会、2003年、p191-p192参照。
    (注4)インターネット上のサイトは、安定性を欠くため、いつまでも存在するとは限らない。そこで、資料として保存する環境を整えるよう国立国会図書館法で規定され、2010年4月から制度収集が始まっている。(「インターネット資料収集保存事業」)。
    (注5)『図書館情報学用語辞典 第3版』丸善
    (注6)『改訂 図書館資料論』平野英俊ほか編著、樹村房、2009年、p142
    (注7)『電子書籍の衝撃』佐々木俊尚著、ディスカヴァー携書048、2010年 参照
         『時事通信』2010年6月17日20時1分配信記事
    (注8)『これからの図書館像:地域を支える情報拠点をめざして』これからの図書館の在り方検討協力者会議2006年3月
    (注9)『asahi.com』2010年1月13日配信
    (注10)『産経ニュース』2010.2.1 19:06配信
    (注11)2010年6月22日付『日刊スポーツ』20面(東京ナビ〜ビジネスリポート)
    (注12)『千代田図書館とはなにか』柳与志夫著、ポット出版、2010年、参照
    (注13)『地域を支える公共図書館』丸山修企画・編集、財団法人高度映像情報センター
    (AVCC)、2007年、p16-p112

     

    図書館学私論|-|-|-|-|by ネコスキイ

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