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政治経済学再入門 49 商業資本と貸付資本

2010.12.06 Monday
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    12章 商業資本と貸付資本

     

     

    1. 商業資本と商業利潤

     まえにのべたように、資本は、その循環の中で、貨幣資本、生産資本、商品資本、という3つの姿(形態)をとります。資本のこの3つのすがたは、商品の生産にたずさわる産業資本の一定の発展段階で、互いに自立するようになります。

     すなわち、産業資本が大きくなると、そこからもっぱら商品流通の部面にたずさわる商業資本と、もっぱら貨幣の調達と貸付の部面にたずさわる貸付資本とが、それぞれ自立した一資本としてわかれるのです。

    このようにして、近代的な商業資本が、ほんらい、産業資本の流通の部面での機能を代行するものにすぎず、したがって、すでに成立している産業資本の再生産過程のなかにくみこまれ、それによって規制されています。

     しかし、商業資本一般は、商品の売買にたずさわる資本ですから、歴史的には、ある程度発達した商品流通および貨幣流通があるかぎり産業資本があらわれる以前から存在しました。

     そういう産業資本の成立にさきだって存在した商業資本を、前期的商業資本といいます。

     前期的商業資本は、資本まだ社会の再生産過程を全般的に支配しておらず、したがって、市場もまだ十分に統一され安定したものになっていないので、価値法則が商品交換を完全に規制していないという状態を、その存在の前提にしていました。そこで、前期的商業資本の利潤は、個別的に安く買って高く売ることから、すなわち、もっぱら流通における商品の価格の差(不等価交換)からひきだされました。このようにして得られる利潤を「譲渡利潤」といいます。前期的商業資本(およびそれらに貸し付けていた高利貸資本)のもとに、かなりの大きさの貨幣財産が集積されたことは、歴史的には、産業資本及び資本主義生産様式の成立の条件の一つでした。

     これにたいして、近代的に商業資本は、すでに産業資本および資本主義生産様式の支配のもとであらわれる商業資本です。たがって、その利潤は、もとより「譲渡利潤」ではありえず、むしろ価値法則の完全な作用を基礎らして成立するものなのです。みのノートでは、もっぱら近代的な商業資本と商業利潤の本質について解説します。

     というのも、その解明をとおしてのみ、前期的商業資本と「譲渡利潤」の本質もはじめてあきらかにされるからです。

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

    この産業資本とは、商品を直接に生産し、したがって、剰余価値を直接に生産し、取得する資本です。産業資本の支配が成立すると、資本主義生産様式もまたはじめて成立しました。産業資本は、資本主義社会における資本の基本的な存在形態です。

     商業資本は、商品の流通過程に支出される資本です。ところで、さきに述べたように(純粋な)流通過程では剰余価値=利潤は生産されません。では、商業資本の利潤はどうして生まれるのでしょうか。

     もしも産業資本家が、その商品を自分で売らなければならないとすれば、商業用のいろいろな設備や販売員の雇い入れなどに、自分の資本の一部を追加的に支出しなくてはなりません。 

     そうすれば、自分の資本を全部生産にふりむけたときにくらべれば、(生産における)その利潤率はさがり、利潤は減ってしまいます。したがって、産業資本家は、たとえその商品を生産価格以下でひきわたしても、商品の販売を商業資本家にまかせたほうがよいことになります。

     そのうえ、産業資本家は、商品の販売を商業資本家にまかせれば、自分の資本の回転をはやめて、利潤をふやすことができます。

     さらに、商業資本が商品の流通に専門的にたずさわるようになると、分業の利益によってまえよりも流通にいる時間と費用を節約でき、また一つの商業資本が多数の産業資本の商品の販売をまとめて引き受けることができ、そのことによって、資本全体の流通費用が少なくてすむようになります。こういう諸事情のために、産業資本家は自分の商品をその生産価格より低い価格で商業資本家に引渡し、商業資本家はそれを生産価格で売って、その差額を自分の利潤として手に入れるのです。こういうしくみで、生産過程でつくりだされた剰余価値の一部分が、商業資本に分配されます。

     このように、商業利潤とは、剰余価値のうち、産業資本家が自分の商品を実現してもらう替わりに商業資本家にゆずりわたす部分です。こうして、剰余価値は、産業利潤と商業利潤とにわかれます。

     商業資本の運動は、G – W - G’です。ここでは、生産資本の段階はなくなっていて、生産との結びつきは外見上はたちきられています。ここから、商業利潤が価格のつりあげからうまれるような偽りの外見がうまれます。こうなると、先に述べた「利潤の真の性質と起源」はいっそう覆い隠されてしまいます。

     ところで、商業利潤の大きさはどのようにしてきまるのでしょうか。

     もしも、商業の利潤率が産業の利潤率より低ければ、商業資本の一部は引き上げられて、産業資本代えられます。逆の場合には、逆です。こうして、より高い利潤率をもとめる資本の競争と移動をとおして、産業資本と商業資本の利潤率は平均化されます。

     このように、商業資本は利潤の生産にはくわわりませんが、利潤の分配にはくわわり、産業資本と一緒になって新しい平均利潤率の形成に参加するのです。こうして形成されたあたらしい平均利潤率(P’’)は、産業資本だけが平均利潤率の形成に参加すると過程した場合の平均利潤率(P’)より当然小さく、剰余価値=総利潤の産業資本と商業資本とをあわせた全資本に対する比率できまります。

     すなわち、図のように、産業資本の総量(C+V)は500兆円、剰余価値=総利潤(m)は150兆円、したがって平均利潤率(P’)は30%1桁は切り捨て)であるとします。つぎに、この新しい平均利潤率が形成されたときの商業資本の総量を250兆円とすれば、新しい平均利潤率(P’’)は、

    であり、したがって、産業利潤は100兆円(500×20%)、商業利潤は50兆円(250×20%)になります。

     

      商業利潤の成立の過程で、商業資本による商業労働者の搾取が行われます。まず、商業資本に雇われる商業労働者もまた、生産労働者とおなじ賃金労働者です。なぜなら、彼らもまた、生産労働者とおなじように、もともと自分を雇った資本の利潤追求の手段にすぎず、彼の労働力を商品として売っているのであり、したがって、彼の賃金の大きさはその労働力の価値によって規定されており、彼の労働の量やそれによってもたらされる利潤の量とはなんの関係もないからです。

     商業労働者の労働は、なんらの物質的財貨=商品を生産せず、したがって、価値も剰余価値も生産しません。しかし、商業労働者のおかげで、商業資本家は、はじめて生産過程で作り出された剰余価値の一部を手に入れることができます。

    商業資本家は、この剰余価値部分から、

    1)商業用の建物や設備などに支出した「物的経費」を埋め合わせたうえ、

    2)商業労働者の賃金を支払い、

    3)あとにのこっている剰余分を自分の商業利潤として取得します。[1]

     すなわちこの場合、商業資本家が、生産過程からひきだした剰余価値部分から「物的経費」をさしひいたのこり全部を、そっくり商業労働者の賃金として支払うなどということはありません。商業労働者にたいしては、あくまでその労働力の価値によって規定されている賃金を支払うにすぎず、あとの剰余分はただでとってしまう、すなわち搾取するのです。

     商業労働者の労働も不払い労働と支払い労働に別れます。そうして、「労働者の不払い労働が生産資本のために直接に剰余価値をつくりだすのとおなじように、商業の賃金労働者の不払い労働は商業資本のためにこの剰余価値の分け前をつくりだす」のです[2]



    [1] ここに述べた(1)の商業用の「物的経費」(これを流通手段といいます)、および(2)の商業労働者の賃金は、純粋に流通費用です。したがって、これらへの支出は、社会的にみれば、いわゆる「空費」であり不生産的支出ですが、商業資本にとっては、「資本投下」であり生産的支出です。「商人にとっては(ほんらいは“空費”である)流通費が彼の利潤の源泉としてあらわれ、この利潤は、---平均利潤率を前提すれば---流通費の大きさに比例する」(『資本論』)わけです。

    [2] 『資本論』

    政治経済学再入門|-|-|-|-|by ネコスキイ

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