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政治経済学再入門 52 株式会社

2010.12.06 Monday
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    4.株式会社、創業者利得

     資本主義生産が増大し、信用が発達するのにともなって、資本主義企業は、個々のの資本家各人が所有する個人会社というかたちから、しだいに株式会社というかたちをとるようになりました。株式会社とは、よく知られているように、その企業の資本金を、多数の小額の株式にわけて徴募し、多数の株主(株式の所有者)の払込み金によって調達するというかたちをとった企業です。そうして、株主にはその所有する株式に応じて企業の利潤の一部を配当するというしくみになっています。後にみるように、株式会社の普及によって、個人では調達できないような巨額の資本が調達できるようになり、資本の集積と集中(さらには独占の形成)の過程はいちじるしく促進されました。

     歴史的に見ると、株式会社は、すでに17世紀のはじめに発生しましたが、とくに19世紀の後半から、鉄道などの巨額の資本が必要な工業部門および銀行業でひろく普及されました。現代では、株式会社は、おもな資本主義諸国の工業生産において圧倒的な比重をしめるにいたりました。

     株式会社における最高機関は、形式上は株主総会です。株主総会は、事業報告の承認、方針の決定、役員の任命、などの企業の活動についての最重要事項をきめますが、そこでの議決はすべて議決権のある株式数に応じてなされるのです。したがって、形式的には、ある株式会社を支配するのには、その株式総数の50%以上を所有していれば完全なわけです。しかし、実際には、大多数の中・小株主が多いので互いに連絡をとってまとまることもなく、はじめから株主総会には出てきません。彼らは、もともと企業の運営に関与する意志も力もなく、たんに配当金をうけとるだけのの事実上の「利子取得者」にすぎません。

     それゆえ、実質的には、ある株式会社を支配するのには、その株式総数の50%以上を所有している必要はないので、それよりずっと少ない株式数を所有していれば十分支配的地位につけるのです。

     このように、ある株式会社を支配することができるのに実際に必要な株式数のことを、「支配可能株数」といい、それは今日では、普通には株式総数の10%20%程度であると見られます(この点をつかんでおくことは、のちに独占資本の支配方法を理解するためのカギの一つになります)。

     現在、株式が僅かな額の株式しかもたない多数の小株主にますます分散した現象をとらえて、ブルジョア経済学者はそれを「株式の民主化」とよび、それがまるで資本主義企業が「民主化」して、多数の人民の「支配」に服し、人民の利益に奉仕するものに変えられた(人民資本主義!!)ことであるかのように主張していますが、これくらい人々を欺瞞する話はありません。いわゆる「株式の民主化」の本質は、「支配可能株数」をいっそう少なくてすむようにし、したがって、少数の大株主である大資本家の支配を著しく強めることにあるのです。

     ところで、株式は、株式市場(証券取引所)においては、じつはその額面価格とはべつの、ちがった価格で売買されます。それを株式の時価または相場といいます。株式相場のの大きさは、つぎのように株式の配当金額を利子率で割った額にもとづいてきまります。すなわち、貸付資本または利子うみ資本の機能が一般化すると、貨幣資本はつねに銀行に預金しさえすれば定期的に一定の率で利子をもたらします(ただし、ゼロ金利政策のもとでは、この考えが正しいかは疑問)。

     そうなると、こんどは定期的に一定の率で支払われる配当は一種の利子のようにみなされ(利子化され)、そこでの配当をもたらす株式もそれだけの利子をもたらす利子うみ資本のようにみなされる(資本化される)のです。ですから、株式は、もしその売却代金を銀行にあずけたときの利子所得が、配当と同じ大きさ、またはそれ以上になるような価格で売買されることになります。

              

     

     

     


    たとえば、いま、利子率(平均利子率または公定歩合)が年5%で、年20%の配当をもたらす額面50円の株式ががあるとすれば、その相場は、

      (=時価=相場)

    にもとづいてきまります。

    この場合、もし株式相場が200円より安ければ、株式の所有者は株式を売って銀行に預金しようとし、株式相場は、たえざる変動をとおして、結局200円に落ち着くわけです。以上でわかるように、株式相場は、配当がふえるにつれてあがり、利子率があがるにつれて下がるのです。

     

     以上のように、定期的に一定の率で配当をもたらす株式などの有価証券[1]は、ちょうどそれだけの利子をもたらす利子うみ資本のようにみなされる(資本化される)ので、擬制資本といいます。擬制資本とは、定期的にもたらされる貨幣所得にたいする請求権の価格であるわけです。

     ですから、この請求権そのものは、利子うみ資本そのものとはちがって、実際には価値もなく、したがって資本でもないわけです。このほんらいは価値でもなく資本でもない証券が、売買されしたがって価格をもつようになると、それから逆に類推されて、そこに架空の資本価値が擬制される(実際にあるかのようになぞらえられる)にいたるのです。

     さきにのべたように、利子うみ資本の成立は、資本の価値増殖の生産的基礎をまったく覆い隠すものでしたが、擬制資本はさらにそのことに輪をかけるのであって、ここにいたって資本の物神的性格の完成はその頂点に達します。さきにのべたように、資本主義の発展につれて利子率が低下する傾向にあるため、擬制資本は現実の資本よりはるかにはやく増大します。

     株式への配当は(利潤のなかから社内留保や重役賞与をひいた)利潤の一部分ですから、配当の率は、利潤率よりは低いが、しかし利子率より高いのが普通です。

    利子率i’ ≦ 配当率r’ ≦利潤率p’

     


     ですから、株式相場(時価)は、普通は株式の額面価格より高いのです。いいかえれば、擬制資本は、現実に支出された資本より大きいのです。そこで、この両者の差額が、つぎのように創業者利得という特別の利潤となって大資本家のふところにころがりこみます。

    すなわち、いま株式会社の創業(設立)にあって、巨大な資金力をもった資本家(普通は大銀行)が、その資本をいっきょに調達するとともに、全株式の発売をひとりじめに引き受けます(たとえば、額面50円の株式一億株を総額50億円でひきとり、その発売を引き受けます)。そうすると、その株式会社はまもなく事業をおこない、平均利潤をあげ、平均利子率より高い率で配当を支払うか、支払うことが確実とみなされます(たとえば、平均利子率5%のときに20%の率で配当を支払います)。

     そこで、創業にあたって全株式を額面価格でひきうけていた資本家は、それを額面価格より高い相場で発売し、その差額をまんまとふところにいれるのです(たとえば、時価1200円の株式一億株を総額200億円で売りさばき、最初に支出した資本50億円との差額150億円をふところにいれるのです)。

     このようにして、株式会社の創業にあたって、株式の発売をひとりじめに引き受けた創業者が、自分の利得として手に入れる、株式相場と株式の額面価格との差額、いいかえれば擬制資本と現実に支出した資本との差額が創業者利得です。

     (インサイダー取引は、創業時でなくても値上がり確実な情報を株式公開前に得て取得・売買することなので、創業者利得獲得に似ていますが、資本主義の高度の段階に特有な利得との差があり、また、合法、非合法の大差があります。)

     創業者利得は、たんに株式会社を新しく設立する場合だけでなく、個人会社を株式会社に組織がえする場合にも、増資をする場合にも、ひねりだされます。創業者利得の発生は、巨大な資本家が(株式の発売の独占力にものをいわせて)、ほかの多数の出資者を搾取することを意味します(創業者利得は、独占的高利潤の源泉の一つです)。

     一方では、多数の労働者が毎日汗水流して働いても、ぎりぎりの生活しかできないでいるのに、他方では、ひとにぎりの大資本家が株式の売買を電話やネットで指示しさえすれば、たちまち巨億の金がまるで魔法のように転がり込む、資本主義とはなんとあくどいカラクリに満ちた社会でしょうか。



    [1] 有価証券。普通は、一定の額の出資金とひきかえにだされる所有者の経済的利権の保証書であって、証券市場で自由に売買されます。株式・国債・公債・社債などが、そのおもなものです。


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