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行政法ノート  行政の不作為

2011.10.12 Wednesday
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    JUGEMテーマ:学問・学校

     行政の不作為について


    1 行政の流れ 
     行政庁は、行政活動の担い手である行政主体の意志を決定し、これを外部に表示する権限を有する機関である。この行政庁の処分決定の時期を中心として、行政庁のなすべき行為を〇前処分行政行為事後救済と時系列的に分類できると仮定しよう。
     この〇前処分(あるいは国民の視点から考えれば事前救済とも言える)として行政手続法や情報公開法が制定されていると考えられる。
     また、行政行為は当然、行政法で規定されその法規の機械執行としてのき束行為と裁量行為とに大別される。いずれも、憲法、法律および行政立法、条約、条例と規則、慣習法、判例法、法の一般原理を行政行為、運営の規範とする。当然司法統制を受ける。
     さらに、事後救済として国家賠償法、行政不服審査法、行政事件訴訟法がある。

    2 行政庁の作為と不作為 
     「行政庁の不作為」(簡単には何もしないこと)は、以上の流れのどの位置においても起こり得るため、このような公権力の権限不行使による不利益・被害に備え、国民救済としての規定がおかれている。 とくに,涼奮である行政訴訟にいたる以前の事前手続においては、予め、申請に対する行政庁の不作為を回避するために、行政手続法が、審査基準を公にすること(第5条)や標準的な処理期間(第6)、申請の審査を遅滞なく行うこと(第7)、申請拒否にたいする理由の提示(第8条)、申請者の求めに応じ審査の進行状況及び処分の時期の見通しなど情報の提供につとめること(第9条)等を規定している。
     △涼奮では、行政行為の不作為は法律違反等で厳しく規制されるが、とくに裁量行為としての自由裁量は司法審査の対象となる場合もある。行政事件訴訟法は、第30条で「行政庁の裁量処分については、裁量権の範囲をこえまたはその濫用があった場合に限り、裁判所は、その処分を取り消すことができる」と規定している。
     近時においては、この裁量権の不行使(不作為)があった場合に、国民に“行政介入請求権”、“無瑕疵裁量行使請求権”が認められ、この不作為を国家賠償、行政訴訟で争う見解が有力になっている(皆川治廣『行政法の基本体系』北樹出版、2000年、P57)。裁量権収縮論は、一定の場合には「規制権限を行使するか否かについての行政庁の裁量は収縮・後退して、行政庁は結果発生防止のためその規制権限の行使を義務づけられ、したがってその不行使は作為義務違反として違法となると解すべきである」(原田尚彦『行政責任と国民の権利』弘文堂、1979年)とした考えである。

     △涼奮では、「行政庁の不作為」について行政不服審査法第2条2項では、「行政庁が法令に基づく申請に対し、相当の期間内になんらかの処分その他公権力の行使に当たる行為をすべきにかかわらず、これをしないこと」と規定し、第7条で不作為についての不服申し立て(異議申し立て及び審査請求)の道を開いている。 また、行政事件訴訟法では、第3条5項において「不作為の違法確認の訴え」の定義として、「行政庁が法令に基づく申請に対し、相当の期間内になんらかの処分または決裁をすべきにもかかわらず、これをしないことについての違法の確認を求める訴訟」としている。これは「行政庁のにぎり潰しを排除する制度」(塩野宏『行政法饗萋麋如挈斐閣、95年、P183)であり、裁判所によってこの違法性が確認されると、行政庁は速やかに処分、決裁をおこなうよう拘束を受けることになる。

    3 行政庁の不作為をめぐる行政法上の論点
     以上のように々埓庁の作為の側から積極的に「不作為」を防止できるか、不作為の結果を訴訟で争い賠償できるか、I垪邂拂に向かって不服申し立て、違法確認できるかが、行政法上の論点として浮上してくる。以下、基本的人権を公権力からまもり、国民を救済する立場からそれぞれの論点を検討する。
     
     ‘辰帽埓手続上の「不作為」の未然防止がすべての行政庁で保障されるかという問題である。事前救済として存在する行政手続法は平成6年に施行された新しい法律である。上記に述べたとおり「申請」についての「不作為」を事前抑制的に防止する効果があるといえる。不利益処分について聴聞弁明という二段階方式を採用するなど行政手続における適正手続が保障され、国民の能動的関与ができるようになっている。
     ところが、第3条2項で地方公共団体の条例ないし規則に基づく処分・行政指導・届出等に関しては当該法律が適用されないと規定しているため、地方公共団体のする「不作為」に法律上は歯止めがかからないと解することもできる。第38条にはこれらの手続きに関して必要な措置を講ずべき、と規定してもである。
     
     特に(ア)権限不行使の違法性と(イ)作為義務の導出方法としての裁量権収縮論が問題となる。 
     (ア)権限不行使の違法性
       京都府にたいして宅建業免許の付与・更新、その宅建業者に対する業務停止処分・取消処分等の規制権限行使を懈怠したことが違法であると主張した国家賠償請求訴訟は、第一審判決では規制権限不行使は違法であると原告請求を一部認めた。しかし、控訴審判決では、規制権限の不行使について、著しく合理性を欠くとは言えないとして第一審判決を取り消した。そして、最高裁平成元年11月24日判決でも、「具体的事情の下において、知事等に監督処分権限が付与された趣旨・目的に照らし、その不行使が著しく不合理と認められるときでない限り、右権限の不行使は、当該取引関係者に対する関係で国家賠償法1条1項の適用上違法の評価を受けるものではない」と判示した(『行政判例百選供P290)。
       また、薬害クロロキン訴訟判決(最判平成7年6月23日)でも、薬害を未然に防ぐための厚生 大臣の規制権限行使--日本薬局方からの削除、製造承認の取消措置--をしなかったことは「著しく合理性を欠くものとはいえない」(『行政判例百選供P292)として行政庁の不作為が直ちに違法となるわけではないことを示した。これに対しては批判的見解が少なくないと言われる。したがって「著しく合理性を欠くもの」が違法になるというべきである。
     (イ)その権限不行使の違法性判断の前には、作為義務の存在がある。この「義務」の導出方法に「裁量権収縮論」に立つものとそうでないものに大別される。前者を採用した例として野犬幼児咬死事件判決などがあり、後者は警察官ナイフ保管懈怠事件判決などがある。ところが上述の宅建業法事件判決、薬害クロロキン訴訟判決では裁量権消極的濫用論にたつものであると言われる。

     最後は「不作為の違法確認訴訟」についての論点である。
       最高裁昭和47年11月16日判決「不作為の違法確認等請求事件」では、(ア)独禁法45条1項は独禁法違反として公正取引委員会に報告した者に審判請求権を認めたものかどうか、(イ)認めたものでないとしても公正取引委員会が何らかの「適当な措置」をとるべき義務を負うかどうか、(ウ)審判請求権が認められない場合、不作為の違法確認の訴えが不適法となるのか、が問題とされた(『行政判例百選供P476)。
       結局、この判決は「独占禁止法45条1項は、公正取引委員会の審査手続開始の職権発動を促す端緒に関する規定であるにとどまり、報告者に対して、公正取引委員会に適当な措置を要求する具体的請求権を付与したものであるとは解されない」としてこの訴えを不適法、上告棄却された。
        しかし、ここで提起されている問題は、不作為の違法確認の訴えが申請権のある者の申請に対する行政庁の不作為の違法を確認することによって申請に対する許否の判断を促す機能を有する点を考えると、申請権の有無は、行政庁の不作為が違法となるかどうかの前提であると言える。立法当初は、申請権の有無は不作為の違法確認請求の理由の有無の問題とされていたが、この見解では手続過程が権利義務関係であることを十分分析されていないと考えられる。                         

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