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債権総論ノート 債権者代位権について

2011.10.12 Wednesday
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    JUGEMテーマ:学問・学校

     資本主義社会において、たとえばある債権者が、ある債務者に資金を貸し付けることは日常茶飯事である。債権者にとっては債務者の財産が債権の裏付けになっている。この債務者の財産を民法では、責任財産と呼んでいる。その“責任財産の風船”が小さくしぼんだり、破裂(破産)したりしてしまうと、一般債権者の債権は実現できなくなってしまう (「スタートライン債権法[第2版]」池田真郎著、日本評論社、99年、P191)。

     つまり、何らの担保手段を持だないなら債権者は債務者の財産が減少していくのを黙ってみているよりほかはない。債務者の一般財産は債権者の「最後の守りをなす」(「新訂 債権総論」我妻栄著、岩波書店、64年、P157)。憲法第29条は「財産権はこれを侵してはならない」としているが、民法は、債権者に対して、債務者の財産の利用処分の自由に干渉することを認めている。これが債権者代位権と債権者取消権である。ただし、本来は債務者が自由にできることを債権の保全のために制約するのであるから、その目的のための必要最小限の干渉にとどめている。

     そのうち債権者代位権は間接訴権、代位訴権ともいい、債務者以外のものに法律的効果を及ぼすので債権の対外的効力の一つであるといわれる(「法律学小辞典」新版、有斐閣、96年)。現代では、債権の対外的効力は、むしろ債権の不可侵性、債権侵害にたいする不法行為の成立を意味する(「債権総論」(法律学全集20)於保不二雄著、有斐閣、72年、P159)

     
     さらに立ち入って1.意義、2.要件、3.客体、4.行使について述べ、5.その制度の転用について考察する。


    1.債権者代位権の意義

     債権者代位権は本来債務者の財産を保全するものであるが(責任財産保全制度説)、現代においては、それに加えて強制執行としての性質もあわせて有すると考えられる。 
     ところが、強制執行の場合には債務名義を必要とするが、債権者代位権の場合にはそれを必要としないところに債権者代位権の実益があるとされている(簡便な債権回収手段説)。
     さらに、債権者代位権は裁判外においても行使できる(「民法刑銚∩輜澄γ簡殃権」内田貴著、東大出版会、98年、P263参照)。または、代位権とは「包括的担保権的なもの」(明39大判の表現)ものである(「債権総論[第2版]」平井宜雄著、弘文堂、94年、P262)と考えられている。


    2.債権者代位権の要件 

     債権者が債権者代位権を行使しうるのは、「自己の債権を保全する為め」である(民法423条1項本文)。保全が必要なのは、債務者の責任財産が債権者に弁済するのに不十分であり、債権者代位権を行使しないと債権者が弁済をえられない虞のあるからである。
     十分な弁済能力があるならば、債権の弁済を請求し取りたてることはできない。判例は、金銭債権を保全するために債権者代位権を行使する場合には、債務者の無資力を要件(無資力要件という)としてきた。これが、「契約関係に入ると先だって信用調査が行われるゆえん」(「民法概論掘丙銚∩輜澄法彑洩遽儖戝、良書普及会、78年、P89)である。
     ところが、債権者に十分な資力があっても、特定債権が履行されないことは十分に考えられる。そこで、一般には特定債権の保全のために債権者代位権が利用されるときには、債務者の無資力はその要件となっていない。その判例として、不動産の売主の共同相続人の一人が買主に対する売買代金債権を保全するために、他の共同相続人に対する買主の移転登記手続請求権を代位行使する場合に、債務者(買主)の無資力を必要としないとした例がある。

     代位権行使の他の要件は、債務者の権利不行使と債権が履行期にあることであるる。前者は、債務者自身が債権者代位権の対象となる権利を行使していないことである。債務者の権利行使が不十分、不適切であるときは、債権者は債務者のしている訴訟に補助参加するなどの手段をとるべきであるとされる。後者については、原則として、債権者代位権制度は、強制執行が可能な状態にあること、すなわち、債権の履行期が到来していることが必要であるとされている。これに対して2つの例外がある。裁判上の代位と保存行為の場合である。第1に、債権者の債権の期限が未到来であっても、裁判上の代位権行使が認められる(民法423条)。第2に、保存行為については、債権者の債権の期限が未到来であっても、代位権を行使でき、裁判上代位行使する必要もない(423条2項但書)。保存行為というのは、たとえば、債務者の所有する未登記の不動産の保存登記をするなど債務者の財産の減少を防止する行為である。


    3.債権者代位権の客体

     民法423条1項は、但書で債務者の一身専属権が債権者代位権の対象とならないことを規定している。したがって、それ以外の権利は、債権者代位権の客体となると考えられる。客体となるものとして判例は、移転登記請求権、抹消登記請求権、第三者異議の訴えを提起すること、妨害排除請求権等を示している。 
     客体とならないものとして債務者が請求し得ない権利は、債権者代位権の客体とはならない。民法 
     423条1項但書の一身専属権というのは、行使上の一身専属権であって、帰属上の一身専属権ではないと解されている。後者は、特定の権利者だけが享有できるものを                        いい、譲渡、相続の対象にならないものである。(896条但書)前者は、特定の権利者だけが行使できるものをいう。


    4.債権者代位権の行使

     民法は、特に債権者代位権の行使方法について規定していない。ただし、債権者代位権を行使する債権者の債権の期限が未到来であるときには、裁判上の代位でなければならないと規定されている。(423条2項) 期限が到来したときは、裁判外において自由に代位権を行使できる。その場合、債権者は債務者の代理としてではなく、債務者の名義でなく、債権者自身の名義で代位権行使すべきものとされている。相手方の地位について、代位債権者は、債務者の地位にたつ。そこで、相手方は、債務者に対して対抗しうるすべての抗弁権を代位権を行使する債権者に行使することができるとされている(相殺、権利消滅、同時履行等)。(以上「民法刑銚∩輜澄很鄲実消、有斐閣、99年、P80〜P90参照)


    5.債権者代位権の転用

     債権者代位権の行使は、判例では金銭債権にかぎられていない。「判例は、制度本来の趣旨を拡張する」(「新訂 債権総論」我妻栄著、岩波書店、64年、P160)。例えば、‥效呂稜禺腓移転登記請求権を代位行使すること、土地の賃借人が賃借権を保全するため上地の不法占有者にたいして賃貸人(所有者)の妨害排除請求権を代位行使すること、これらの事例は、特定債権の保全を目的とするものであり、本来民法が予定していた事案とはことなるが、民法423条を適用して、債権者代位権の行使を認めた。これが債権者代位権の転用と呼ばれる現象である。
     一般的に転用を認める条件として,△覿饌療な結果を導くことが妥当とされる場合に、それを導くためのより直截な法的手段・法技術が十分開発されておらず、特に一応まず考えられる法的手段の使用がその伝統的理論などの故に困難とされるような場合であって、△修療祥僂砲茲辰栃棲欧生じないか、若干弊害があっても右の望ましい結果と比較すれば僅少のものでもやむを得ない場合であるとされる(星野説−「新版・判例演習民法3 債権総論」谷口他編、有斐閣、82年、P85参照)。

     では、上にあげた‥亠請求権、∨験嫁喀請求権の代位権行使を考察してみよう。

     ”堝飴困AからB、BからCへと順次譲渡されたが、いずれの売買についても移転登記がなされていない場合に、判例は、Cが、CのBに対する移転登記請求権を請求でき るとしている(明治43年大審院判決一土地売買登記及代金請求の件)。これによって、AからB、BからCへと移転登記することが可能となり、Cとしては、Bが移転登記手続に強力してくれなくとも、所有権取得を確実なものとすることができ、Cにとって対抗要件を備えるための、有効な手段を与えることになる。


     ■悗Yから賃借している土地をZが不法に占拠している場合、判例は、Xは賃借権を保全するために、Yに代位して、Zに対して妨害排除を請求できるとしている(昭和4年大審院判決−バラック収去土地明渡請求事件)。賃借人がその土地をいったん占有した後であれば、占有権に基づき妨害排除請求をなしうる(198条)。また、判例は、一定の場合に賃借権に基づく妨害排除権を認めている。これらの手段がとれない場合、賃借人が目的土地の引き渡しを受けていない場合など、代位権行使による妨害排除請求を認める意味がある。(「民法判例百選供徑斐閣、96年、P34〜P37参照)

     これら転用現象事例について共通する点は、本来直接請求の問題として処理すべき問題であること、被保全債権と被代位債権とが密接な法的関係を持つ点である(下森説−「新版・判例演習民法3 債権総論」谷口他編、有斐閣、82年、P85参照)。

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