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法哲学ノート  「正義論」を語る

2012.01.18 Wednesday
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    評価:
    平野 仁彦,亀本 洋,服部 高宏
    有斐閣
    ¥ 2,310
    (2002-05-01)

    JUGEMテーマ:学問・学校

     いま、なぜ、正義を語らなければならないか?そもそも法の価値は「正義」を実現することにある。そこで、,海遼,実現すべき「正義」とは何か?、◆屬覆次弩譴詆要があるのか?、「いま」、正義を語る必要があるのは何故か?、の3つに分けて考える。

     崟亀繊廚箸浪燭? 一 戦争と正義の系譜から

     正義は、「正義とは各人に彼の権利を享有せしめようとする恒常不断の意志」(ウルピアヌス、平野他著『法哲学』、有斐閣、P93)という主観的正義と、社会関係について正・不正を判断する客観的正義に区分される。キリスト教や「〈知恵〉があり、〈勇気〉があり、〈節制〉をたもち、〈正義〉をそなえている」国家(『国家』岩波文庫、P282)を主張するプラトンなども、どの時代、どの国においても成立する絶対的正義を欲求してきたが、戦争を典型とした現実問題の解決は相対的正義の衝突であった(先のタリバンとアメリカの衝突は典型であろう)。

     アリストテレスは、形式的に正義の概念を定義して、平均的正義と配分的正義に区別した。すなわち、前者は、各人の社会的価値にかかわりなく、もっぱら利害の得失を平均化するものである。後者は、社会における貢献や努力に値するものだけが報いられる実質的平等である。 しかし、「正義」の実質的内容について語っていない。

     では実質的内容とは何か?それは、時代や集団、国によって変化してきた。 しかし、瞬時に情報が交換でき、自国内での個人の行為でさえ世界に大きく貢献する現代では普遍的価値をもった「正義」の実質的内容(現代的普遍的「正義」)を規定することができるはずである。それはギリシヤのポリス内やキリスト教世界内でさえできたから  
    である。

     その現代的普遍的「正義」である「国内国際両社会問題に対する平和的解決の完全なる基本的原理」(藤川吉美『正義論の歴史』論創社、P227)の要請に応えるものとして  ロールズの『正義論』が現れたと言われる。

      ロールズは、正義の一般的構想として「すべての社会的価値(自由と機会、所得と富、自尊の基盤)は、・・・あくまでも平等に分配されねばならない」(平野仁彦他『法哲学』有斐閣アルマ、02年)という見解を提示した。「平等な権利」を前提に、ー匆颪悩任睇垓な立場にある人々の便益を最大化するような社会経済的不平等は許される(格差原理)。

    ⊆匆馘・経済的不平等の是正を判定する際には、むしろより機会の少ない人々により多くのチャンスを与えるかどうかを重視するべき(公正な機会均等の原理)という考えである。

     この、ロールスの「公正としての正義」論を、憲法の基礎づけの理論として読解するなら、日本国憲法13条後段は、ロールスの「『人格的利益説』のとる考えとよく似たもの」(大日方信春『ロールスの憲法哲学』有信堂、P224、01年)といえる。

     この基本的人権を保護する基礎的事項として、国民主権主義と平和主義があり、その根底的原理として「個人の尊厳」がある(清宮四郎『憲法I』有斐閣、P55以下)。

     そこで、私は、現代的普遍的「正義」とは、この日本国憲法の3原則々欝彿刃足基本的人権尊重9駝閏膰△塙餡伴膰△判鼎覆襪發里筏定できると考える。戦争放棄を基本的人権を擁護する制度としてしている点が、人類歴史の最高の到達点であるからである。
      


    ◆屬覆次廖∪亀舛鮓譴詆要があるのか?

     2001.9.11同時多発テロと報復戦争は、国内に向かって、国外に向かって「正義」とは何かを考えさせられる転機となった。このテロを契機に、ブッシュ大統領は、「テロ撲滅」の「正義の戦争」の名のもとに、他国を巻き込んでタリバン政櫓下のアフガニスタンに対する「報復戦争」を挑んだ。 日本国内では、この「正義の戦争」について2方向の対立意見が見られる。

     キリスト教世界では、「正義の戦争」の概念は、トマス・アクィナスに至って確立していた。 それはローマ教会の基礎的な概念を築いたアウグスティヌスの立場を敷街したかたちで、(1)戦争行為の命令を下す主権の権威、(2)正当な事由が要求される、(3)交戦者は正当な意図を持つことを条件としていた(『神学大全』35巻)。

     この概念は、ローマ教会が“すべでの個別国家の上にたって、交戦するもののどちらが正義かを示すことができるという建前になっていた。 しかし、この考えが、近代に至ってそれよりも上位の決定機関をもたない単独の国家が最高の主体であると考えられるようになると、紛争の解決を戦争に訴えることは、国家の自由、権利であるという無条件無差別主義に陥った。「正義」の判断も個別国家の自由に委ねられた。 第1次、第2次世界大戦を支配したのは、この考えである。

     それを反省したかたちで、戦争はある条件のもとに限られるとする戦争限定主義が「国連憲章」というかたちで、国家を越える上位規範が現実化された。国連憲章51条では、違法性が阻却される例外的な場合として、個別的自衛権の行使という限定を認めている。

     戦後、世界平和は、この無差別主義と戦争限定主義との間で揺れ続けてきたが、同時多発テロ事件とそれへの報復戦争によって、大きく無差別主義の方向へ動きつつある(月刊『保団連』01年10月26日、加藤尚武鳥取環境大学学長、日本哲学会委員長)。

     したがって、「正義の戦争」の「正義」は、トマス・アクィナスの想定した国家を超越した上位機関の判断や「国連憲章」の理念より、個別国家の判断が優先する時代に突入。「正義」の観念は、2つの世界大戦以前に後退した。

     よって、戦争を軸に考えたとき、現在の「正義」とは、惜しむらく、アメリカのする戦争の「正当性」に収束すると考えても無理はない。戦争違法を主張している国連憲章があるにもかかわらず、「正義」を語る理由は戦争のためか、平和のためか、戦争をたたかって訪れる「平和」のためか。一般的に正義を語ることは、「〈正しいこと〉は、強い者の利益」(プラトン『国家』岩波、P49)に成り下がるのではないか。

     いや、98年のハーグ市民会議では、戦争放棄の日本国憲法9条を全世界の政府に働きかけようと決議し、現在では、EU憲法草案に「9条」の精神を取り入れようという運動が広がっている。この「正義」を語ることは、戦争を阻止する力になる意義がある。

     

    「いま」、正義を語る必要があるのは何故か?

     そこで、以上の定義、歴史をふまえて政治、その継続(『戦争論(上)』クラウゼヴッツ著、P58、岩波文庫)としての戦争を、「正義」を語ることによって回避することはできるか?という問いを発し、生々しい03年の対イラク戦争を想起することで、今、正義を語るべき理由を解明したい。

     同時多発テロと「正義」の名のもとの報復戦争が起こった後、さまざまな新聞、雑誌が社説で「正義」論を一つの焦点に21世紀論が展開された。 その中でまず、私が注目するのは『琉球新報』01年10月9日付社説である。 「今回に限らず、世界で紛争や政治的な緊張があるたびに、ただちに県民生活まで脅かされるのが、基地沖縄の現実だ。戦後、このような経験を繰り返してきたゆえに米国が主張する『正義の戦争』に進んで支持表明する気持ちにはなれない」

     この表明は、「県民生活」の安寧、人間の尊厳の尊重という譲れない現代的普遍的正義の主張であろう。 また、この戦争の一因として、『南日本新聞』02年1月1日付社説は、「米国は唯一の超大国となり、グローバリズムという市場原理主義で世界経済を牛耳った。・・貧困、不公平感、絶望感以外何ももたらさない米国一国集中システムヘのいらだちがテロをはぐくんだのではないか」

    「(米国も)二酸化炭素の排出削減を決めた京都議定書の拒否、包括的核実験禁止条約(CTBT)や弾道弾迎撃ミサイル(ABM)制限条約の棚上げと国際協調無視が目立っている」ことを挙げている点にも、現代的普遍的正義の実質的内容があると考える。

     これらの主張は、現代戦争の「正義」は相対的であると同時に、「人間の尊厳の尊重」の観点からすれば、正義の論拠は平和をぬきに存在しないということを語っている。 したがって、いま、正義を語らなければならない理由は、グローバル化の中での標準化と差異化による人間性破壊を道徳的、法的に解決するためであり、その土台たる世界平和の実現のためである。そして語るべきその正義は、現代的普遍的正義であり、日本国憲法の示す3つの原則や国連憲章51条など、人類が到達した「正義」の実定法的典型である。

    古い法学系ノート|-|-|-|-|by ネコスキイ

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