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早朝の風 79 夏の戦争責任論
夏になるとテレビも新聞も、あの15年戦争の責任についてあれこれと特集します。
一つだけ絶対にマスコミでやらないのは天皇責任論ですが、もっと深刻な不理解にもとづく責任論を示している小説を見つけました。
小説ですから、事実ではないのですが。
山岡荘八と言えば大部の『徳川家康』などを書いた歴史小説作家ですが、その彼の作品の中に『小説 太平洋戦争』というのがありまして。
毎年、夏になると何らかの戦争問題についての資料を読むことにしているので、戦記物を探していたところ彼の小説に突き当たったというわけです。
まるで見てきたように人物を描写するのが小説ですが、そこに何らかの自分のメッセージを込め、それを読み解くのが読者の楽しみだったりして、事実関係とはちがうことに頓着しないのも小説として面白かったりするのです。
歴史史料でまだ発見されていない空白を埋めて、それを裏付ける史料が後から発見されたりすると、小説家の科学性が証明されたりします。
山岡さんの『小説 太平洋戦争』の最後の方には、極東軍事裁判についての異議がどうどうと書かれています。
それについては、同意はしませんが、反論の仕方が笑い転げる方法をとっているので、これは是非紹介したいと思いました。
講談社文庫の『小説 太平洋戦争 (9)』p238
(氏は、極東軍事裁判はあまりにも仮定がひどすぎて、小説作家も顔負けの筋書きを立てた。このような平和や人道に対する罪をかぶせる筋書きが可能なら、以下の仮定も成りたつではないか!!!と主張する)
「マルクスが1818年に生まれなかったら、レーニンも現れなければスターリンも現れず、支那の共産革命も、今日に続くベトナム戦争の虐殺もなかったろう。したがって、共産革命によって失われた地球上数億数千万人の虐殺という人道上の罪はあげてマルクスにある・・・・」
「そうした小説を書きあげる作家が将来出て来まいものでもない。出て来れば結構資料もあるだろう。しかし、こうした法廷を新しく設定してマルクスを告発したり、さばいたりしようという法律作家が現れたら、世間はこれを正気と受け取るであろうか?」
氏の主張は、極東裁判の論理とは、以上のような狂気であると断じるのです。
たしかに、極東裁判は、天皇と財界を裁かない欠陥があります。
が、極東裁判が気に入らないかといって、このような間違った反論をすることも欠陥です。
さらに、思想的影響と言えばレーニンまでであって、レーニンもマルクスの解釈を間違えています。スターリンはマルクスの逆を行っています。
「支那の共産革命」というのは中国も認める、実現していない事実であり、ベトナム戦争の虐殺は資本主義国の盟主としてのアメリカが犯したことなのです。
反論するにも事実にももとづかない、めちゃくちゃなのです。
しかも、こういう小説が大出を振って発売されているのです。
これが「この国のかたち」なのかな?
早朝の風 78 アメリカがチリをみならう
アメリカの地位低下が叫ばれてから久しいですが、その低下を補おうとするのが今の大統領の仕事になっています。
米国のデフォルト危機なんて聞きたくもない事態ですが、これはゼロではないのです。
アメリカ国債発行残高が法律で上限を決められているため、これをあらためないとデフォルトになると危機感をあおるコメントが多数流れています。
簡単に言うと、借金の上限をもっと上にして、もっと借金できるようにしないと、返せなくなりますよ、ということですね。
それが、8月2日が期限だというから、のっぴきならない緊急事態なのです。
格付け会社のムーディーズは、上限撤廃論を強硬に主張しています。それは、もしデフォルトをアメリカが起こせば、リーマンショックどころではない“経済災害”を全世界に引き起こすのです。
それでは。その解決法は、法律を改正して上限を高くするか、借金体質を改善するか、ということになります。
そういうことを率先してやっている国が南米にあり、「チリ」という国だというのです。
それを見習えという論調も出てきていますね。
南米は全体としては借金体質でありデフォルト危機が何度もあったわけです。その中では異例なのがチリだということから来るのが、その論拠なのです。
健全財政の国を見らならえ!
というのは自由ですがね。
裏庭であったチリはアメリカが民主政府を抹殺し、軍事政権を立てた従属国家と言われていました。最近では、銅鉱山に埋められた労働者を救い出すドラマが世界を励ましています。
チリも中南米の独立・自立の波に乗って、アメリカとは一線を画した政治的・経済的自立の道を歩み出すなかで、「財政規律」を生み出してきたわけでしょう。
そういうチリにアメリカがみならうというのは、もう、アメリカ強国支配の世界でないことを宣言したようなものです。
考えて見れば、アメリカ国債は中国、日本はじめ何100兆円と買っているので、それが国家予算の一部となり、アメリカ合衆国を支えているようなものですから、予算のウチ、中国、日本の占める割合が大きいということは、体面にもかかわることにもなりましょう。
だから、借金は減らしたいが、支出が増えるので借金を増やさないと運営できないというジレンマになっているのです。
しかし、デフォルトという債務不履行は、世界の大混乱を招きますから、当面、暫定的に予算比率の上限を上げるとともに、赤字体質を見直すというプライマリーバランスを考える必要があります。
最大のムダはアメリカの軍事だということが言える政党や政治家がいないならば、大きくは変わらないでしょう。
核兵器や原子力発電のムダをどう解決するかも、今後の課題でしょう。
むしろ、この方面で大ナタを振るうならば、みならう対象としてのアメリカの“地位”は向上すると考えます。
そして、このことは戦争は必要だが、核兵器は廃絶したいオバマ大統領の矛盾の解決と同時に見えます。
早朝の風 77 ビートルズ世襲
そんな中、噂として、ビートルズが“再結成”されるとささやかれています。
ジョン・レノンとジョージ・ハリスンは息子が代わりに入るとまで具体的です。
ロンドン・オリンピックも来年かと考えると4年もあっと言う間でしたね。
開会式だけの臨時ユニットかもしれませんが、シェイクスピア以来の文化創造者ですから、英国も国民あげて喜ぶでしょう。
そう考えると、アンドリュー王子の結婚も、オリンピックという文脈に入るのかもしれません。
でも、ロック・バンドが世襲というのも、ロック精神に反するかもしれませんぜ。諸君。
ちょっと知られたナンバーと新作を歌うというような企画なんて、こさえられたら耐えられないかもしれません。
低調なCD・DVDの売れ行きに火をつけたい商人たちの魂胆が見えます。
ちょっと噂で、アド・バルーンをあげて、話題性を測ってみようという調査かもしれません。
オリンピックは、そういう刹那と無関係でなければなりません。
ロンドンならばハリー・ポッターの乗る列車や最高質のミュージカルで迎えてくれた方がいい。
世界を征服していった歴史をどう描くのかも見てみたいものです。
創造者に世襲は要りません。
早朝の風 76 やらせメールの扱い
「笠井亮ナイスジョブ!」
ツイッターではこうささやかれています。
九州電力が玄海原発再稼働のために関連会社社員に再開を支持する「やらせ」メールを指示した問題では、すでに7月2日『しんぶん赤旗』が報道していました。 それを使って衆院予算委員会で日本共産党の笠井亮衆議院議員が追及したことが発端になって、九電社長が謝罪しました。
これは首が飛んでもしかたない話ですが、もっと深刻なのは、嫌と言えない九電の協力会社に国民を装って再稼働要請のメールを送るという体質です。
こういうことは偽の民主主義にはつきもの。これまで、メールのないときは文書とか口頭でやってきたものなのまでしょう。
九電に限ったことではないというところまで追及すべきです。
共産党はかつて、教育基本法の「改悪」のとき、教育委員会等にお願いして賛成発言させるやらせメールを暴露したことがあります。
そういう態度が今度も生きたといういうべきでしょう。
ところが、本来、7月2日のスクープ記事に注目して、マスコミが飛び付かねばならないのに、それができないのは根強い反共主義、反共風土にほかなりません。
国会議事堂の中にいるマスコミの記者たちは、黒塗りの車で取材に来るのです。
各党と記者クラブが『赤旗』を資料としてとっていたとしても、どちらを向いて取材しているかがわかろうというものです。
一方、笠井亮氏は、出版している本を見ても反共主義のないユーロ・ビートなのです(当たり前か)。よっ、イケダン。
つまり、「偽の民主主義の形」が「このくにの形」だと正確に判断するなら、偽メールという実態が少なからず存在するだろうと想定して、取材していくことが重要です。
辞めた松本復興大臣が「上から目線」でものを言ったということを追及するだけでなく、その実態がどこから出てくるかという原因まで掘り下げるべきなのです。彼の支持団体がそれを許してきたのではないかと。石原自民幹事長の質問は、その点の追及がない。
今回、共産党が成功したのは、この現象とその原因を突き詰めようとした科学的態度なのです。
政治は科学だ!と言ったのは今は流行らないレーニンですが、レーニンの色々な間違いや勇み足があったとしても、この言葉は真理だと思います。
ただし、この真理が多くの支持者をあつめるためには、アインシュタインの相対性理論がそうだったように、国民の確信が必要なのです。
そのために、何をなすべきか。
『赤旗』拡大か。党員拡大か。折伏かディアレクテクか。
南米のようなささやき戦術か。
旧ロシアのチェルヌイシェフスキーのような流行小説か。
いずれにせよ、やらせメールの扱いは、これらの現象と原因の一つとして捉えるとき、最大の力を発揮するものだと思いました。
「理論家としての人間にとっては、行動の上で自分の思考がエゴイズムによっていかに支配されているかを観察することは楽しい」(チェルヌイシェフスキー『何をなすべきか』岩波文庫、金子幸彦訳、1978年)
これを社会的に観察するともっと楽しい。やらせメールもこの一つ。
- 早朝の風 79 夏の戦争責任論 (07/28)
- 早朝の風 78 アメリカがチリをみならう (07/19)
- 早朝の風 77 ビートルズ世襲 (07/17)
- 早朝の風 76 やらせメールの扱い (07/07)
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