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永遠のダルトン・トランボ
評価:
--- TCエンタテインメント ¥ 4,568 (2017-05-10) |
JUGEMテーマ:映画
『ローマの休日』、『スパルタカス』という映画は映画ファンなら知っているに決まっています。
だが、その脚本を書いたのは誰かというのはあまり知られていません。
オードリー・ヘップバーンをスターダムにのし上げた映画が『ローマの休日』でありましたが、ダルトン・トランボ氏が赤狩りで嫌われたため友人の名前で書きました。
その後、『黒い牡牛』でアカデミー脚本賞をもらったときもペンネームで書きました。
その実力を見込んで、俳優カーク・ダグラスと監督ブレミンスキーが別々に自宅に乗り込んできて『スパルタカス』や『栄光への脱出』の脚本を書いてくれるよう頼みこんできました。
それの映画を公開するときは、やっと実名のクレジットで、脚本「ダルトン・トランボ」で復活しました。
共産主義者が嫌いでも思想信条の自由は守らねばならない。この一点で多くの支持者を得たわけです。
ジョン・スチュアート・ミルもそのようなことをかつて主張しましたね。
アメリカにも共産主義者がいて、その人々が愛国者であることを主張すること。暴力的でなければ、その自由を保障する、内心の自由を保障すること。これこそが自由主義の本質であってそれ以外のものはないのです。
2015年にダルトン・トランボの抵抗の人生を描いた映画が上映されましたが、今もビデオ店では長い人気を誇っています。
今は反共主義という言葉さえどこかに行った感がありますが、またまだ共産党との統一候補を出すのは嫌だと拒む民主党国会議員もいて、諸葛孔明のように見守るしかないのですが、いつか分かってくれますよ。
それにしても、スカッとするトランボとその家族でした。
「殿、利息でござる」の無私
JUGEMテーマ:映画
この映画は、今新進気鋭の歴史学者の磯谷氏の著作の一部を映画化したものです。
映画は、歴史の中で、「無私」を描くと喜劇になり、「悪徳」を描くと悲劇になります。
多くの金貸屋は江戸時代において「悪徳」の典型のようなものですが、この映画においては地域の存続という一点で、子々孫々まで「無私」の精神を貫くという点で金貸屋、酒屋そして肝煎り(庄屋)が団結しました。
フィギュアスケートの羽生弓弦さんも出演し話題になり、昨年ヒットした映画はレンタルされてじわじわと歴史愛好家に支持されて広がっています。
歴史資料から説き起こし、従来の画一的な歴史観や中央集権的な考えから脱却した歴史叙述は、多くの人にとって真新しいものです。また、その歴史が現在にも引き継がれ、過去を生きた人物から引き出される教訓が現在に染み渡るのです。
英雄史観は往々にして政権をとった人物の武勇伝ですが、司馬遼太郎氏はその英雄に民衆を組み込んだところが注目されました。今回、「平成の司馬遼太郎」と言われる磯谷氏はもっと大衆的な群像を英雄として、史実から扱っています。
藩が統一せず「日本国」がない時代には、それぞれの地方主義があってそれが真理だった時代があり、その真理を探究することが歴史科学なのだと今さらながら考えるきっかけとなりました。
先般、流行っているという『応仁の乱』をざっと読んで、著名な英雄のいない大戦の複雑な駆け引きは、簡単に言うと武力をともなった権力闘争でしたが、時代は違えどもこの映画の「無私の人々」はそういう権力者のもとで知恵を出して抵抗して生きた歴史であったのです。
歴史史料に頼りすぎる史料主義には組しないとしても、連綿とつづく正義の歴史は民衆に多くあるのではないでしょうか。
衝撃の竹原ピストル
評価:
竹原ピストル ビクターエンタテインメント ¥ 2,818 (2017-04-05) |
JUGEMテーマ:音楽
NHKのSONGSという番組を見て、久々衝撃を受けました。
この番組は時々見てたのですが、松田聖子、スガシカオ、いま実家の旅館を継ぐという話題の竹内まりあ等々、一度は一世を風靡した歌手の番組だと思ってみていました。
それが、今回のプログラムを見て衝撃が走りました。
「竹原ピストル」という名前は、以前からアルバイトニュースのコマーシャルの下の方に出ていたので気になっていました。
ちょっと、J-WALKのボーカルっぽいなぁ、と思っていましたが、すごい深い内容の歌でもあると考えていました。
遅ればせながら、初めてご尊顔を拝し、キム兄(芸人の木村祐一)にも似ていました。
初めて、その「よう、そこの若者よ」を全部聞き来ましたが、これが驚きの内容です。その前に実は、声優の山寺宏一氏が物まねしていたので逆にそこからイメージしていました。
よう、「そこの若けーの」と叫ぶ寂びの部分が素晴らしいのですが、同時に「俺の言うことを聞いとくれ〜」と言いながら、「俺を含めて、だれの言うことも聞くな」という歌詞が、若者へのメッセージになっている点が、聞くに値する、いや、今までの多くの歌手の歌詞とは違う点です。
そこが衝撃的でした。
中島みゆきの「地上の星」をはじめ、良い歌には矛盾した物言いが歌詞にちりばめられがちなのですが、この「若者」へのメッセージも矛盾だらけです。
そこが、聞く耳を騒がせるのです。
あたかも、又吉氏の新作『劇場』冒頭の、薄い皮なのに瞼から見えたためしがない、というような修辞です。
シン・ゴジラと北朝鮮への対応
JUGEMテーマ:映画
遅ればせながら、DVDで『シン・ゴジラ』を観ました。
政府の危機対応が素晴らしく、いまの安倍政権の対比でみると対照的でした。
ゴジラのエネルギー源が核反応であり、それが発する放射線にモニタリングポストが反応してアメリカ空母が非難していくシーンは現在の日米同盟のあり方に一石を投じます。
この映画の主役はもちろん「ガッジーラ」(ゴジラ)ではありますが、それが出現した背景に海中への核物質投棄があり、それを飲み込んで“進化”しつづける生物だったとの仮説が面白い点です。旧ゴジラも核兵器への反語として出現したのでしたから、それを踏まえて脚本上で深めたものと考えられます。
この映画は一方で自衛隊の宣伝にもなっていて、知らなかったのは御殿場あたりからの誘導ミサイル弾を東京まで飛ばすことができたり、青森の三沢基地から東京までスクランブル発進して空爆できることや、朝霞・練馬駐屯地で作戦計画全体を練ることなど、いつでも首都東京を壊滅できる火力を自衛隊がもっているということが理解できました。
ゴジラがこの火力を使っても“駆除”できないため、さらに米軍に応援をたのみ核兵器に次ぐ巨大な貫通力をもつマザー爆弾投下でさえ、ゴジラを壊滅できないので、国連安保理は熱核兵器を使うことを決議しますが、ここでムクムクと唯一の被爆国である日本人の心が大きく台頭してきます。
物語は主に、長谷川博己、竹野内豊、石原さとみ演ずる配役が回していきます。それぞれ革新政治家、保守政治家、アメリカの利益を代表しています。ただ、石原さとみ演ずるアメリカ特使は、祖母が日本人という設定で日本人の心を奥深く宿しています。
これらの駆け引きで、最終的には熱核兵器を使わせないギリギリの選択を長谷川(総理補佐官・国会議員)にさせ、石原(日系アメリカ特使)も本国アメリカの意に反して同調します。
最後の選択が、核エネルギーを使うゴジラに対して国連軍に核兵器を使わさないという選択だった、というところが今回の北朝鮮危機への対応として学ぶべきところでしょう。
あらためて、『シン・ゴジラ』の現在的意味を浮き彫りにしたと言える“危機的”状況になっています。
しかし、危機なのは誰か?
明日にも過労死、さもないと失業する労働者がゴマンといる日本ではないか。
- 永遠のダルトン・トランボ (05/29)
- 「殿、利息でござる」の無私 (05/25)
- 衝撃の竹原ピストル (05/19)
- シン・ゴジラと北朝鮮への対応 (05/01)
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