憲法学ノート 憲法三大原理の元

2011.10.12 Wednesday
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    評価:
    芦部 信喜
    岩波書店
    ¥ 3,255
    (2011-03-11)
    コメント:国民運動で憲法を定着させる意義がよくわかります。

    JUGEMテーマ:学問・学校

     日本国憲法の三大原理は、国民主権主義、基本的人権尊重主義、平和主義であるといわれる。例として清宮四郎「憲法I」(有斐閣、P5 5以下)では、「憲法の憲法」としての根本規範として上記3つの主義を挙げ、さらにその根底の原理として「個人の尊厳」を置いている。この分類に従って、日本国憲法の三大原理を以下に説明する。


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     第二次世界大戦後すぐ、ポツダム宣言もふまえつつ、各界が新憲法草案をだした。このポツダム宣言は「日本国政府は、日本国国民の間における、民主主義的傾向の復活強化に対する一切の障碍を除去すべし。言論、宗教及び思想の自由並びに基本的人権の尊重は確立せらるべし」と要求した。

     新憲法要項・草案は政府はもちろん、政党として自由党、進歩党、社会党、共産党、民間団体として憲法研究会、大日本弁護士連合会、憲法懇談会、帝国弁護士会、また、個人からも発表された。国民主権との関連では、天皇の大権を調整した天皇制の維持についてはだいたい一致した。廃止を主張したのは共産党と高野(個人)の案である。衆議院でのの前文の修正で「主権が国民に存すること」を明らかにされ、第1条において主権在民を明示したことでやっと日本でも近代の国民主権が確立したといえる。(「憲法(J)」浅井清、P18以下)

     この主権の概念は、歴史的な理由にもとづいてア統治権、イ最高独立性、ウ最高決定権という3つの異なる意味にもちいられるアは日本国憲法41条の「国権」にあたり、ポツダム宣言8項「日本国の主権は・・」という規定に見られる。イは憲法前文3項「自国の主権を雅持し」という場合がその例。ウは憲法前文1項「ここに主権が国民に存する」と言う場合及び1条で「主権の存する日本国民の総意」という場合が当たる。(「憲法」新版、芦部信喜、有斐閣、98年、P40参照)。もとより「主権」(sovereignty)は、歴史をへて「最高の権力」等の意義に用いられる。新憲法は、政治支配の権力が最終的に選挙権を有する国民にある「政治的主権」を採用し、前文と第1条の「主権」に結実した。(「憲法(J)」浅井清 P 3 1参照)


     基本的人権尊重主義

     グロチウス、ロック、ルソー、モンテスキューにおいて開花した自然権思想および権力分立論は、人間の権利・自由の保障とそのための国家組織の制度化によって具体化された。 自然権思想はアメリカ独立宣言、フランス人権宣言に具現し、権力分立原理はアメリカ合衆国憲法、フランス憲法(1791年)に実定化された。一方、明治憲法では、基本的人権は、「日本臣民」だけが享有する権利になり、「法律の範囲内において」など立法権をもってすれば侵すことができるものに成り下がった。しかし、新憲法では、アメリカ独立宣言以来の「基本的人権」が高らかに復活宣言される。その内容は、第1に、自然法的な権利を成分法上に規定され、政府は貴族院での答弁で「基本的人権と言うものは、この憲法以前に考えらるべき」と裏付けた。第2に、基本的人権は「何人も」享有する。第3ぱ、「公共の福祉」の枠内で、立法権をもって基本的人権を制限することができるものとされる。しかし、それを正当化する理由は「各基本的人権の性質に応じて具体的に引き出されなければならない」(佐藤幸治「憲法〔第3版〕P403、青林書院)。
     種類は、だいたいア「自由権」イ「請求権」ウ「参政権」に区別しうる。また、エ「社会権」は、福祉国家の理想にもとづき社会的・経済的弱者保護を実現するために保障されるようになった「新しい」自由権的人権である(「憲法(J)」浅井清、P74参照)。

     アは、精神的自由(内心の自由、表現の自由)、経済的自由、人身の自由であり、国家が個人に領域にたいして権力的介入することを許さず、個人の自由な意志決定と活動を保障する人権である。その意味で「国家からの自由」とも言われる。イは、請願権などの国務請求権である。ウは選挙権、被選挙権などで、自由権確保を保障するものである。その意味で「国家への自由」とも言われる。エは、生存権、教育を受ける権利、労働基本権である。社会的・経済的弱者が「人間に値する生活」営むことができるように国家の積極的な配慮を求めることのできる権利である。その意味で「国家による自由」と言われる。 それらの前提として、憲法13条「生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利」は憲法に列挙されていない新しい人権の根拠となる一般的かつ包括的な権利である(包括的基本権)とされる。また、憲法14条「法の下に平等」は、人権の総則的な意味をもつ重要な原則となっている。(「憲法」新版、芦部信喜、有斐閣、P121以下参照)

     そして、新しく意識されつつある人権として、明文化されていない環境権、プライバシ一権、知る権利=情報公開権などの人権も各種裁判や市民運動で明らかにされ、この面からの憲法改正の動きもある。しかし、これらも幸福追求権としてまとめ、包括することができるという意見もあり、京都府学連事件最高裁判決(昭和61)は、この具体的権利性を認めた(「憲法」新版、芦部信喜、有斐閣、P115参照)。

     これらの基本的人権の享有主体は、国民、天皇および皇族、外国人、法人(団体)だが、享有主体性については、マクリーン事件や八幡製鉄政治献金事件の判例(「判例ハンドブック第2版(憲法)j 芦部信喜編P28〜29参照)や学説は別れる。(佐藤幸治「憲法」〔第3版〕青林書院、P411以下参照)


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     平和主義の来歴は人類の苦渋の歴史である。戦争廃絶の努力として、国際法では1919年の国際連盟規約、1929年の不戦条約、1945年の国際連合憲章などが存在し、憲法では、1791年のフランス憲法、1946年のフランス第4共和国憲法、48年のイタリア共和国憲法、49年のドイツ連邦共和国基本法、72年の大韓民国憲法などで戦争放棄の規定が設けられた。しかし、これらは侵略戦争の制限ないし放棄にかかわるものにとどまっている。これに対して、日本国憲法は、侵略戦争を含めた一切の戦争と武力の行使および武力による威嚇を放棄し、その徹底のための戦力の不碍持を宣言、そして国の交戦権を否認した。 前文では「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した」と述べ、国際的に中立の立場からの平和外交、国際適合による安全保障、集団安全保障を想定している。しかし、この考えは他力本願であるとの批判もある。また、そのような消極的なものではなく、平和を実現するために積極的に具体的に行動をとるべきことを要請しているという意見もある。

     具体的には、第9条で平和主義を規定している。 第1項は、「日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求」と述べて、戦争放棄の一般的動機を表明したのちに「国権の発動たる戦争」「武力による威嚇」「武力の行使」を放棄する。ここでいう「戦争」とは、侵略戦争であり、自衛戦争は放棄していないとする説と自衛戦争も含むと解する説がある。またヽ第2項は「国の交戦権はこれを認めない」とする。この交戦権について、交戦状態に入った場合に認められる国際法上の権利とする説、文字通り、戦いをする権利とする説、両者を含む説がある。

     この日本国憲法の平和主義の原理は、日米安全保障条約(安保条約)を中心とする安保体制との間で重要な問題点がある。日本の領土におけるアメリカ基地が攻撃をうけた場合、共同防衛行動がとられること(安保条約5条)を、憲法でどのように説明するかと言う問題や「極東」の範囲が明確でない問題、また、国連憲章51条(武力攻撃が発生した場合に自衛権発動)について現実の武力攻撃の時か、脅威が認められるときかに解釈の違いがあるなどの問題がある。

     さらにより根本的な問題として安保条約が違憲かどうかと問題で下級審と上級審で差がある。砂川事件では、一審判決で安保条約にもとづく駐留軍が憲法9条2項の戦力に該当するので違憲と判示し、最高裁判決ではそれを高度の政治性を有するものであって、司法裁判所の審査になじまないとして原判決を破棄・差し戻した。(「判例ハンドブック第2版(憲法)」芦部信喜編P23、P213参照)

     ず埜紊法∈廼疣誕蠅砲覆辰討い觀法改正について、三大原理を説明するのに必要な命題である。改正の限界は三大原理を成分化した「前文」である。改憲論者でさえ「私達の憲法生活の改善を目指して、日本国憲法九六条の手続きに従って改憲は行われ得るとしても、人権・民主・平和の三大原理を害する『改正』だけはもとより行えないのである。」 (「憲法守って国滅ぶ」小林節、KKベストセラーズ、92年、P81)と語っている。

     日本国憲法の三大原理はそれほどに確固としたもの、歴史的に試され済みの普遍の原理であることがわかる。

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